本コラムでは紫外線が皮膚に与える影響について少し述べたいと思います。
皮膚は上から表皮、真皮、皮下組織の3つの層からできています(図1)。
表皮の厚さは僅か約0.2mmですが、表面は死んだ細胞が集まった平らで丈夫な角質層で覆われていて、これが水をはじき、細菌やウイルス、その他の異物が体内に侵入するのを防いでいます。
表皮の最も内側には、皮膚の色を濃くするメラニン色素を作っているメラニン細胞(メラノサイト)があります。真皮は線維組織と弾性組織でできた厚い層で、そのほとんどは蛋白質のコラーゲンやエラスチンからなり、この層が皮膚に弾力性と強さを与えています。
紫外線は太陽で作られる太陽光の一部です。地上に届く太陽光には、目に見える可視光線(いわゆる「光」)、赤外線と紫外線が含まれています。
可視光は波長によって長い順に赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の7色に分光され、これは空にかかる虹の色として見ることができます。紫の光より波長が短い太陽光が「紫外線」で、太陽光の中での占める割合は約6%にすぎませんが、可視光や赤外線と比べてエネルギーが大きいので、物質に化学変化を起こしやすい特徴をもっています。
紫外線は波長の長い順にUVA、UVB、UVCに分類され(図2)、波長が短くなるにつれ生体に対する破壊性が強くなりますが、幸いUVCは地球を覆うオゾン層で吸収され、地表に到達しません。
紫外線は殆どが皮膚表面で吸収されますが、UVBは約5%が皮膚表面から0.1mm下にまで透過します。
UVAは約7%が0.5mm下に透過し、真皮まで届きます。紫外線は細胞内の遺伝子DNAや、種々の蛋白質にダメージを与えます。日射しを浴びて数時間後に皮膚が赤くなることを日焼け(サンバーン)といいますが、これは主にUVBによって表皮の細胞に生じたダメージに反応して皮膚の血流量が増加したものです。
紫外線に対する人体の防御として表皮内のメラニン細胞がメラニン色素を分泌して紫外線の侵入を阻害し、より深い皮膚組織へのダメージを減らします。日焼けの後に皮膚が黒くなるのはこのためで、これをサンタンといいます。
UVAはUVBよりも危険性は小さいのですが、真皮に達する分コラーゲンやエラスチンにダメージを与え、皮膚の老化に影響を及ぼします。人体にはダメージを受けたDNAや蛋白質を修復する能力が備わってはいるのですが完全なものではなく、ダメージが少しずつ蓄積します。
子どもの頃は強い日焼けをしても一週間もすれば滑らかな皮膚に戻りますが、繰り返し紫外線を浴び続ける顔、手の甲や腕の外側の皮膚は、早ければ20歳頃からシミなどの症状が出始めます。さらに年齢が進むとしわが目立つようになり、40歳を過ぎた頃から腫瘍が出来はじめる方がいます。腫瘍の多くは脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)という良性の腫瘍ですが、少ない頻度ながらも有棘細胞癌や基底細胞癌、悪性黒色腫等の悪性の腫瘍(皮膚癌)が出来ることもあります。
日焼けの仕方は人によって異なり、表1に示した通り、6種類のスキンタイプに分類されます。
日本人はタイプⅡもしくはⅢに分類される方が約半数です。これらのスキンタイプの人は、真夏の日中に太陽光を20~25分浴びるとサンバーンが生じます。タイプⅠは白人に多く、メラニンがほとんど産生されないため皮膚の老化も早く、皮膚癌の発生率が高くなります。日本人でも約10%の方がこのスキンタイプに分類されると言われており、注意が必要です。
市販の日焼け止めローションやクリームには紫外線を防ぐ効果があります。これらには、SPF、PAと呼ばれる紫外線防御効果が記されています。
SPF(Sun Protection Factorの略)はUVBの防止効果を表す指標で、ある一定量の紫外線を持続的に浴びた際に皮膚に赤い斑点ができるまでの時間を何倍長く出来るかを表したものです。
具体的には、赤い斑点が現れるまでに20分程度かかる人がSPF30の日焼け止めクリームを塗った場合、赤い斑点が現れる時間を30倍に延ばすことができるので20×30 = 600分-約10時間の日焼け止め効果が期待できるということになります。
日本では50以上の数値は信用性が低いと言うことで、日焼け止めの外用剤のSPFの上限は50+となっていますが、実際にはSPF30 以上の製品であれば効果はあまり変わりがないようです。
PA(Protection Grade of UVAの略)はUVAの防止効果を表す指標で、UVAを浴びることで皮膚が一時的に黒くなる現象が起きるまでの時間を、日焼け止めを塗った場合と塗らなかった場合で比べて評価したものです。
商品にはPA+(効果あり)、PA++(かなり効果あり)、PA+++(非常に効果あり)という3段階で表示されています。SPFとPAは1cm2当たり2mgずつの日焼け止めを塗った時の値です。日焼け止めを正規量塗ると想像以上に白くなるため薄く塗ることがありますが、それでは効果の高い日焼け止めを使っても本来の効果を発揮しません。また、夏場は汗で日焼け止めが落ちてしまうこともあり、こまめに塗ることが必要です。
SPFとPAの高い日焼け止めは、紫外線に対する効果は大きい反面、肌への負担も大きくなります。これらの日焼け止めは海水浴や屋外でスポーツをする場合だけに使用し、日常生活であまり日に当たらない場合には、数値の低い日焼け止めを使うといった、使い分けをする必要があります。
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