髙橋 怜奈 先生

身近なデリケートゾーンの悩みと日々の洗い方や対処法

東邦大学医療センター大橋病院
産婦人科 助教
髙橋 怜奈 先生

 私が週に1回の産婦人科クリニックで診療をしていて一番多いと感じる主訴は『デリケートゾーンのかゆみ』や『デリケートゾーンのにおいの異常』など、デリケートゾーンまわりの不調です。

デリケートゾーンまわりの不調

デリケートゾーンまわりの不調

 特に数カ月以内に性行為の機会がある方の中には『デリケートゾーンの異常=性感染症かも?』と慌てて受診され、性感染症の検査を希望される方も多いです。しかし実のところ性感染症にかかっても70~80%は無症状で、特に女性は男性よりも体の構造上、症状に表れづらいのです。性感染症を疑ったときに産婦人科受診をすることはとても素晴らしい事ですが、性感染症でなくてもデリケートゾーンに異常がでる事やおりものの異常がある可能性もあるという事を知ってもらいたいなと思います。
 例えば、子宮頸癌の症状として、おりものが増えたりにおったりする事があります。しかし子宮頸癌の初期の場合、症状は全くありません。このように、症状がないからといって『どこにも病気はない』と決めつける事もできません。また、本人は症状として気になっていたとしても生理的な範囲内であったりすることもあります。例えば『おりものが白いんです』と受診する方もいらっしゃいますが、そもそもおりものは透明~白色が正常です。しかし正常範囲であってもパートナーが変わったとか、コンドームをしていない時があるとか、しばらく子宮頸癌検診をしていないのであれば、患者さんと相談して性感染症や腟分泌物の検査、子宮頸癌検査をする事があります。どれも異常がないことがわかって初めて、これは生理的範囲内のおりものだったんだな、と患者さんも納得できます。
 患者さんの多くは何か症状を訴えて受診されます。積極的な薬物療法や処置、手術が必要になる人もいますが、生活習慣を少し変えるだけでも改善する患者さんも臨床現場には多いです。

お手入れや下着を見直してみましょう

 例えばデリケートゾーンがかゆいとおっしゃる方の中には明らかに『洗いすぎ』『擦り過ぎ』の人がいます。話をよく聞いてみると、体を洗うボディソープでそのままデリートゾーンをごしごし洗っていたり、トイレットペーパーで擦るようにふいていたります。
 ボディソープは洗浄力が高く、香料が含まれていたりして、そのまま顔を洗うと目がしみたり、洗い終わった後に顔が突っ張った感じになります。顔を洗うときは顔専用の洗顔料で洗う人も多いでしょう。また体を洗うときにタオルを使っている人も、顔を洗うときはタオルを使わずにネットなどで泡立てて、そっと洗う人も多いのではないでしょうか。このようにするのは顔の皮膚は体の皮膚より薄く、目や鼻など粘膜の組織があり、刺激に弱いデリケートなところだからです。
 デリケートゾーンと呼ばれる部位もその名の通り、顔と同じくデリケートな場所です。最近はマスクをする口周りの肌荒れが気になるという方が増えていますが、実はデリケートゾーンも、サイズの合わないきつい下着をつけていたり、肌に合わない下着をつけていたりすると湿疹ができたりするのです。

顔にしないことはデリケートゾーンにもしないように

 私はよく患者さんに、『顔にしないことはデリケートゾーンにもしないように』とお伝えしています。『ゴシゴシとタオルで擦る』『かみそりで毛を剃る』『かきむしる』『洗浄力の強いボディソープで洗う』などはどれもトラブルの原因になり得ます。本人はおりものに異常があったりかゆみがあると『自分が清潔にしていないせいだ』と責めてしまい、余計きれいにしようと入念にデリケートゾーンをごしごし洗ったり、トイレットペーパーで完全に拭き取ろうと擦ってしまったります。
 しかし、腟には本来『自浄作用』といって外からの雑菌の混入をふせぐために腟内を酸性(通常pH値が3.8~4.5)の状態に保つ作用があります。そしてそれは腟内に生息する乳酸菌の一種である『デーデルライン桿菌』のおかげです。しかし腟内まで洗ったり、洗浄力の強いソープで洗うと自浄作用が破綻してしまいます。風邪をひいたり疲れていたり、抗生物質の服用でも自浄作用は破綻します。

デリケートゾーンを洗う際のポイント

デリケートゾーンまわりの不調

 ですから、まずは必要以上に洗いすぎない事が大切です。 デリケートゾーン専用のソープをしっかり泡立て、泡でなでるようにして外陰部を洗いましょう。腟内まで洗うのはNGです。女性器にはひだがあり、そこに垢がたまりやすいので和式トイレにしゃがむような体勢でがばっと脚を開き、ひだの間も優しくあらいましょう。あくまでも『優しく、泡でなでるように』が原則です。
 そして用を足した後はトイレットペーパーで擦りたい気持ちもわかりますが、擦ると炎症がおきてかゆみの原因になる事があります。擦るのではなく、トイレットペーパーをふんわりと折りたたんで、水分を吸収させるように押し当てましょう。
またデリケートゾーンのトラブルがある方は、より清潔にしようとウォシュレットやビデを頻繁に使う方も多いのですが、実は温水洗浄便座を常用する事が膀胱炎や腟炎のリスクを増加させる事がさまざまな研究で分かっています。たまにさっぱりしたいときや、便秘の時に使うならいいですが、もし膀胱炎や腟炎を繰り返している方の中でウォシュレットやビデを常用している方がいたら、一度やめてみるのも手でしょう。
 トイレットペーパーだけでは経血や尿の拭き残しが気になるという方は、デリケートゾーン用のウェットシートや赤ちゃんのおしりふきを使うことをお勧めします。そうすると拭き残しがなくなり、においも気にならなくなります。

 このように、自分が習慣化している事を少し気をつける事で、今まで悩んでいたデリケートゾーンのトラブルが解消する事はよくあります。何かをプラスする習慣というよりは、いつもの習慣を少し変えてみましょう。そしてトラブルが気になるときはいつでも産婦人科に相談にいらしてくださいね。

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