介護care
大桑 麻由美 先生

おむつ皮膚炎やIADとは?
予防や早期解決のためのスキンケア

監修:金沢大学
医薬保健研究域保健学系
教授
大桑 麻由美 先生

高齢者の排泄にまつわる問題

排泄行為は、単に尿や便などを体外に出すことのみではなく、①尿意・便意がある、②トイレに移動する(尿器・便器にたどりつく)、③衣服を脱ぐ、④排泄の姿勢をとる、⑤排泄物(尿・便)を出す、⑥皮膚に付着した排泄物(尿・便)をふき取る、⑦衣服を身に着ける、⑧排泄物を始末する、⑨手を洗う、⑩居室に戻る、という一連の行動が含まれています。高齢者になると、身体能力の衰え(運動機能の低下)や疾病・薬剤の影響、精神面の影響が現れ、これらの行動に問題が生じることがあります。
日本の65歳以上の高齢者(介護老人保健施設入所者、平均年齢85.2歳)において、尿失禁は66.9%、便失禁は42.8%、尿・便失禁は41.1%という報告1)があります。様々な理由で寝たきりなどの状況になると、周囲の方々の生活上の援助が必須となります。排泄行為だけではありませんが、排泄行為にまつわる問題として「排泄物(尿または便、あるいは両方)の付着に関連して生じる皮膚障害;IAD(アイエーディー)2)」があります。排泄物を収集する手段として、失禁があるためにおむつを使用されている方に生じる、おむつ皮膚炎・おむつかぶれ、といわれるものを含んでいます。IADは、単なる接触性皮膚炎ではなく、皮膚の内部の傷害が生じている病態であり、痛みを伴い、苦痛は大きいといえます。排泄行為を援助する方々による、予防的なかかわりと、早期発見による悪化防止・早期解決がとても大切です。

IAD・おむつ皮膚炎とは

排泄物が付着する皮膚に、紅斑、びらん、潰瘍といった症状があり、痛みを伴うものです。紅斑→びらん→潰瘍となるにつれ重症といえます。
また皮膚に存在するカビ(カンジダ症)の存在は、IAD・おむつ皮膚炎を重症化させる要因となり得ます。
IAD・おむつ皮膚炎はおむつに覆われている部分の皮膚全体に生じる可能性がありますが、特に、皮膚のたるみ・しわがあるところでは排泄物が残りやすく、特に意識して観察することが必要です。またおむつの中は排泄物によって特に蒸れやすく、皮膚が浸軟[ふやけ]したり、細菌やカビ(カンジダ症など)が増殖したり、悪影響を受けることがあります。

①IAD・おむつ皮膚炎のスキンケア:予防

基本は、排泄物が皮膚に付着するのを防ぐ、本来皮膚が持つ機能(バリア機能)を保つことです。
具体的には、①排泄物が付着したときはできる限り早く取り除く(清拭)、②皮膚を清潔に保つ(洗浄)、③皮膚の保湿をする(保湿)、④排泄物が付着しないように皮膚を保護する(撥水)です。

①清拭

排泄(失禁)のたびに行うことが望ましいですが、排泄のタイミングははっきりわからないことも多いため、時間を決めて、おむつの中を確認し、排泄物が確認されたときは、ふき取ります。排泄物は皮膚をふやけさせる(浸軟)ことから、ふき取りを強くすると皮膚を損傷する[傷める]ことがあるので、ウェットタイプのワイプ[おしりふき]を使用するのが望ましいです。

②洗浄

皮膚洗浄剤を用いた皮膚洗浄は、排泄のたびに行う必要はなく、1日1回とします。使用する皮膚洗浄剤は、健康な皮膚と同じ弱酸性のものを選びます。フォームタイプ(泡状)を選ぶと便利です。皮膚のたるみ・しわを伸ばして洗浄すること、洗い流すときは皮膚洗浄剤が残らないようにたくさんの微温湯で流します。

③保湿

皮膚洗浄により、皮脂が除去され皮膚は乾燥します。乾燥した皮膚は損傷しやすく[傷みやすく]、損傷により排泄物に含まれる炎症物質の皮膚内部への侵入を容易にする(許す)ため、洗浄後は保湿剤でカバーします。保湿剤の作用として「エモリエント効果」があるもの、セラミド成分・天然保湿因子を含むものを選びます。

④保護

保湿後の皮膚に、撥水作用をもつ皮膚保護剤を使用して、皮膚の上に「膜」をつくると、排泄物の付着を防ぐことができます。特に使用を考える状況としては水様便や感染を疑う尿が排泄される場合です。
このほかにも、使用するおむつの性能[吸収量]を理解して選ぶことや、排泄物の性状を整える(水様便を改善するなど)ことも考慮が必要です。

②IAD・おむつ皮膚炎のスキンケア:早期解決

スキンケアの基本は、予防の場合と同じですが、IAD・おむつ皮膚炎があり、皮膚が欠損しているときは、専門家に相談します。専門家の鑑別により、正しい治療とスキンケアを行うことが、早期解決のカギとなります。いつもより皮膚の赤みが強い、ブツブツとした湿疹がある、ふき取り時に痛みを訴える(ようなしぐさ、表情がある)、など、普段と違う皮膚の状態が続く場合、注意します。

1) SUZUKI M, OKOCHI J, Murata T, et, al. : Nationwide survey of continence status among older adult residents living in long-term care facilities in Japan: The prevalence and associated risk factors of incontinence and effect of comprehensive care on continence status. J Geriatrics Society, 20(2): 285-290, 2020. doi.org/10.1111/ggi.13872
2) 一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会 編:IAD-setに基づくIADの予防と管理 IADベストプラクティス.p6, 照林社,東京,2019

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