伊藤 泰介 先生

抜け毛の原因とは?
抜け毛が気になる方のシャンプーの選び方

浜松医科大学
皮膚科学講座
准教授・病院教授
伊藤 泰介 先生

いつもより抜け毛が多い?

手櫛をするとなんとなく抜け毛が多い、ドライヤーをしたときに洗面台に抜け毛が目立つ、洗髪時の抜け毛が気になる、といった抜け毛が多いと感じる場合があります。
この抜け毛の原因はいったいなんでしょうか。内臓が悪い?頭皮トラブル?シャンプーがあっていない?こうしたお悩みを考えてみたいと思います。

いつもより抜け毛が多い?
 

普通の抜け毛

だれにでも抜け毛はあります。なぜなら皆さんの頭髪や体毛は成長期間が決まっているからです。成長期間がおわるとメラニン産生や成長を止めて2〜3ヶ月お休みします。お休みしていても毛はすぐには抜けません。ただ伸びなくなってそのままの長さでじっとしています。十分にお休みすると、次の毛の成長が始まります。それまでしっかりと皮膚に固定されていた毛は次の毛が成長し始めると徐々に皮膚から外れていきます。そして新しい毛が皮膚から顔を出す頃に、古い毛が抜けるのです。そうして抜けた毛には小さなメラニン産生をしていない白い毛球が確認できます。皆さんの頭髪の9割は成長期の毛、1割ほどがお休みしている毛です。1日100〜150本ほどの範囲でれば正常な抜け毛です。

シャンプーでの普通の抜け毛

正常な状態ではシャンプーによる刺激で痛みなく抜けてくる毛は休止期毛です。そうした毛が抜けることを避けるためにシャンプーを控えたとしても、いずれ近いうちに自然に抜けてしまいます。1日の抜け毛は100-150本、通常、6割程度がシャンプーで抜けます。しかし1日中髪の毛を束ねていた場合には日中あまり髪の毛が落ちませんから、シャンプー前に髪の毛を解いたりするとシャンプー中に100本近い抜け毛があるかもしれません。また1日おきにシャンプーしている場合には、前日にシャンプーをしていないと翌日のシャンプー時の抜け毛が多いと感じます。

普段より抜け毛が多いとき

いつもより手櫛で頭髪を整えるときやシャンプー、ドライヤーを当てる時の抜け毛が多いと感じたら、一体どんな抜け毛なのか、確認してみましょう。白い毛球がついた長い髪の毛がたくさん抜けているのであれば、お休みした毛が増えて抜けている状態であり、休止期脱毛症といえます。鉄欠乏性貧血や薬剤性などもありますが、脂漏性皮膚炎のこともあります。抜け落ちる毛には白い毛球がついているけれど、短くて弱々しい毛がたくさん抜けてくるのであれば、毛の成長期間がなんらかの原因で短縮してしまっています。もしかしたら女性型脱毛症の始まりかもしれません。毛の途中で切れてしまっているような切れ毛が多いときにはキューティクルがダメージを受けていることもあります。毛根付近でボロボロにダメージを受けた毛の場合には円形脱毛症や抗癌剤による抜け毛の可能性があります。しっかりと観察するためには顕微鏡が必要です。かかりつけの皮膚科に相談してみましょう。

普段より抜け毛が多いとき
 

フケと抜け毛が多いときには?

頭皮がかさかさしてフケや痒み、抜け毛が気になるときには、フケ症や脂漏性皮膚炎が原因となった抜け毛の可能性があります。脂漏性皮膚炎とはマラセチア菌や皮脂分泌過多が原因となった皮膚炎です。この皮膚炎が悪化すると抜け毛の原因となることがあります。マラセチア菌はだれにでもいる常在菌であり病院で治療してもゼロにはできませんが、普段のケアで皮膚炎を予防することはできます。その一つとしてマラセチア菌に有効性のある抗真菌成分を含んだシャンプーを使うことです。日頃のシャンプーにこうしたタイプのシャンプーを取り入れることで、マラセチア菌の過剰な増殖をおさえ、適切な頭皮環境の維持が期待されます。

正しいシャンプーの方法

シャンプーの目的は、髪の毛と頭皮の汚れを落とすことです。予洗いとしてお湯のみで汚れを洗い流した後、シャンプーを手のひらに出してよくあわ立てた後に髪の毛を包むように洗うことが勧められます。そのまま原液を頭皮のつけると、濃い界面活性剤によって頭皮の乾燥や洗い残しなどトラブルの原因になりかねません。手の指腹を使って頭皮と毛髪を軽くマッサージする感じで洗い、その後、お湯でよくすすぎます。毛髪同士を擦り合わせて洗うことは避けましょう。頭皮は爪を立てず指腹をつかって軽く揉むような感じで洗いましょう。なお、毛染めやブリーチ、パーマをしている方は、シャンプー後にリンスやトリートメントをしてキューティクル保護をすることが勧められます。濡れたままの髪の毛はダメージを受けやすいことがわかっています。ドライヤーは20センチ以上離して乾かしましょう。

正しいシャンプーの方法
 

頭皮に優しいシャンプー剤

シャンプー剤は皮脂を落とす目的があるため界面活性剤を含みます。一方、敏感肌の方は界面活性剤によって乾燥肌など皮膚トラブルを起こしてしまう可能性もあります。脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎など頭皮の皮膚トラブルを抱えている方は頭皮に優しいシャンプー剤がおすすめです。近年はアミノ酸やつばき油など各種油剤を含むシャンプー剤があります。
また脂漏性皮膚炎がある場合には、頭皮や毛髪を清浄にし、すこやかに保つために、抗真菌成分「ミコナゾール硝酸塩」と抗酸化・抗菌成分「ピロクトンオラミン」を含んだシャンプーがおすすめです。

頭皮に優しいシャンプー剤
 

最後に

頭皮環境は日頃の生活環境、食事、生活リズムなどさまざまな影響を受けて変化します。抜け毛が気になり出したら日頃の生活を見直してみましょう。そしてできることから、例えばシャンプー剤を変えてみる、理美容師に相談してみるなどもよいでしょう。また症状が改善しない場合にはかかりつけの皮膚科専門医にみていただきましょう。

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