高木 良重 先生

乳がん自壊創のスキンケア
~皮膚を守るための基本技術~

福岡国際医療福祉大学
看護学部 看護学科
講師
高木 良重 先生

自壊創とは?

皮膚に二次性局所浸潤もしくは転移・再発したがんが、皮膚を破って創傷を形成し、体表面に現れた状態で、腫瘤が壊死・自壊して形成した創のことを指します1)

自壊創とは

自壊創を有する場合、スキンケアを躊躇しがちです。
皮膚の生理機能を維持、創周囲に付着した滲出液や血液を取り除くために、適切なスキンケアを行うことが大切です。また、皮膚を清潔・保湿・保護する事により患者さんのQOLを維持します。

基本的なスキンケアとは?

スキンケアの目的は、皮膚の生理機能(バリア機能)を良好に維持・向上させる事です。皮膚の洗浄・保湿・保護を行う事で、創周囲皮膚の二次的損傷を防ぐ事が出来ます。

基本的なスキンケア

洗 浄

熱すぎるお湯は、自壊創周囲の皮膚の乾燥を助長させてしまう為、38度程度のお湯で自壊創と周囲の皮膚を洗い流します2)

  • *シャワー浴時は、水圧が強いと自壊創からの出血や痛みを生じることがあります。シャワーヘッドに靴下をはめ、水圧を弱くすることができます。
  • *シャワーに入れないときは、洗浄ボトルを使用するとよいでしょう。その際には先端を皮膚に近づけ圧がかからないようにします。
乳がん自壊創における洗浄のポイント 乳がん自壊創における洗浄のポイント2

洗浄では、皮膚の表面と同じ弱酸性の洗浄剤の泡を使用します。汚れを泡の中に包むようなイメージで皮膚表面の汚れを取り除きます。摩擦刺激は出血や痛みにつながるため、創周囲皮膚を指の腹で泡をなでる様にします。

  • *苦痛の緩和やケアの時間短縮のために、泡状洗浄剤や洗い流し不要の洗浄剤を選択されることを推奨します。
  • *浸出液や血液が自壊創周囲の皮膚に付着すると皮膚障害を招くため、ガーゼやパッドが当たっている範囲まで洗浄します。
  • *基本的に創には洗浄剤を使用しませんが、創表面に付着した菌を取り除くうえで効果的な場合があります。
洗浄

洗浄後は、洗浄剤の成分を残さないために十分な量のお湯で洗い流します。
流した後、ガーゼ等で押さえ拭きし、皮膚に付着した水分を吸収させます。

  • *洗浄剤が皮膚に残ると、皮膚障害の原因となります。
  • *拭き取る際の出血を避けるため、やわらかい素材のガーゼ、タオル、キッチンペーパー等を使用しましょう。

保 湿保 護

滲出液や血液が皮膚に付着すると浸軟などの皮膚障害を発生します。
撥水性の軟膏やクリーム、被覆剤を自壊創周囲の皮膚に塗布し、皮膚障害を予防します3)

  • *創周囲の滲出液や血液の付着が予測される範囲に塗布します。
  • *軟膏やクリームを使用する際には、無香料のものを選択しましょう。
  • *被膜材はノンアルコールものを使用しましょう。
  • *低粘着性、非固着性のドレッシング材を自壊創周囲皮膚に貼付することもあります。
保湿保護

自壊創に指示された薬剤等を塗布する際、「塗布する」物理的な刺激により痛みや出血を伴うことがあります。
そのような場合には、使用するガーゼやドレッシング材にあらかじめ薬剤等を塗布し自壊創を覆うようにしましょう。

文献
1)一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会 スキンケアガイドブック
2)石澤太市 入浴法および入浴習慣が心身に及ぼす影響に関する研究
3)https://www.almediaweb.jp/skincare/part3/04.html

本コラムは下記メンバーにて作成した。

  • 西田 薫 (福岡大学病院)
  • 直海 倫子 (福岡大学病院)
  • 冨田 美和子 (福岡大学病院)
  • 平林 愛子 (福岡中央病院)
  • 梶田 志帆 (九州がんセンター)
  • 山田 舞
  • 高木 良重 (福岡国際医療福祉大学)
オンラインでの打ち合わせの様子

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