花粉による肌荒れの主な症状
花粉が皮膚に付着して炎症を起こすことにより、痒みや赤み、ぶつぶつした発疹が、皮膚に生じます。原因となる花粉が付着した部分に特に強い症状が出るため、露出して空気に触れている顔や首に起こることがほとんどです。皮膚が薄く敏感なうわまぶたや首の前側では、特に症状がひどくなることがあります。
炎症が強まると、赤いところが腫れて熱を持ち、掻いてしまったところが傷になってじくじくしてきます。症状が長引くと、赤みがだんだんと色素沈着を伴って茶色くなり、皮膚がごわごわとした厚みやカサカサとした細かなふけを伴うようになります。
また、皮膚の炎症と同時に、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目と鼻の痒みといった花粉症としてなじみのある症状を伴うことがほとんどです。症状が出る時期も、春や秋の花粉症のシーズン入りとともに生じ、その終わりとともに消えてしまいます。
花粉による肌荒れはなぜ起こる?
●付着した花粉を排除するために炎症が起こります
花粉に対するアレルギー反応により、皮膚炎が起こります。皮膚に付着した異物に対して防御反応が起こることは当然で、皮膚は炎症を起こして花粉を分解し、痒みを起こして掻くことで物理的に排除しようとしています。このように、自分の身体を異物から守るための免疫反応がかえって病気を起こしてしまうことを「アレルギー」と呼んでいます。
皮膚にはバリア機能といって、外部からの異物の侵入を防ぎ、内部からの水分の蒸発を防ぐ働きが備わっています。しかし、花粉に対するアレルギーが強く起こってしまう方では、バリア機能をかいくぐって侵入してきた微量の花粉成分に対してアレルギー反応が起こってしまうため、正常な皮膚でも花粉が付着すると皮膚炎が起きてしまいます。
もとから乾燥肌や皮膚炎をお持ちの方では、バリア機能が損なわれていますから、より容易に花粉成分が侵入してしまいます。とくにアトピー性皮膚炎をお持ちの方は、バリア機能の低下や以前からの皮膚炎に加え、アレルギー反応に重要な働きをするIgE抗体という成分が血液や身体の組織に多く存在しているため、侵入した花粉成分に対するアレルギー反応が強く起こりやすい傾向があります。
●空気中の花粉が皮膚に付着して炎症が起こります
花粉症は、空気中をただよう花粉によるアレルギーです。春に、スギやヒノキ、北海道ではシラカンバなどの花粉が飛散し、それを鼻から吸入することでくしゃみ、鼻水、鼻づまりを、目に付着することで目の痒みや充血を生じることは、皆さまよくご存知のことと思います。ほかに、吸入することでのどの痒みや痛みを生じたり、飲み込むことで下痢を生じたり、炎症により発熱を生じたりすることがあります。また、秋の花粉症は、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラなどにより起こります。
花粉症患者さんの体内には、これらの花粉に反応するIgE抗体が多く作られており、侵入した花粉成分に対して強いアレルギー反応を起こします。同じように、皮膚に空気中にただよっている花粉が付着するとIgE抗体やその他のアレルギーに関係する細胞が働いてアレルギー性の炎症を起こし、「花粉皮膚炎」と呼ばれます。
花粉による肌荒れを防ぐためには
●花粉を付着させない
原因となる花粉が皮膚に付着しないようにすることが、一番大切な予防法です。外出前には、メガネ、マスク、帽子やマフラーなどで顔や頭をなるべく覆い、浮遊している花粉が付着しないようにします。マスクや帽子、マフラーなど花粉が付着したものは、まめに交換や洗濯をしてください。また、お出かけの予定は花粉の飛散予測を参考にたててください。
花粉が浮遊している時期は、洗濯物を屋外に干すと花粉が付着し、それが皮膚に触れて身体に皮膚炎を生ずる可能性がありますから、顔だけでなく身体に痒みが出やすい方は、屋内に干すことをおすすめします。
●付着した花粉を取り除く
帰宅したら、なるべく早く入浴し、花粉を洗い流します。入浴が難しければ、髪をまとめて顔に触れないようにして、洗顔だけでも帰宅直後に済ませます。ここでご注意頂きたいのは、よく洗おうと思うあまりゴシゴシとこすってはいけません。花粉は顔の皮脂や化粧品に混じって付着していますので、クレンジング剤で浮かせた後に、洗顔料の泡でやさしくなでて洗い、こすらないようにして十分な微温湯ですすぎ落して下さい。拭くときも、柔らかいタオルでやさしくおさえて拭きます。洗顔料は、スクラブ入りのものは弱っている皮膚には刺激が強いことがあるので、避けた方が無難です。
●お肌をいい状態に保つ
バリア機能を健全に保ち、炎症のない安定した皮膚は、花粉の侵入を最小限に防ぐことが出来ます。心身の疲れは皮膚の不安定を招きますので、過度の飲酒を避け、十分な睡眠やバランスのよい食生活を心がけることは、スキンケアの基本として重要です。
入浴後や朝の洗顔後には、乳液やクリームをしっかり塗ることで、保湿だけでなく、花粉が皮膚に直接触れないようにするバリアとなる効果も期待できます。
肌荒れが起きてしまった場合の対策
カサカサとした軽い乾燥だけであれば、十分な保湿を心がけていると落ち着きを取り戻してくることが多いです。しかし、赤み、痒み、ぼつぼつした発疹が出てきた場合には、これらは炎症のサインです。炎症をそのままにしておくと、だんだんと悪循環となり、こじれてしまって治るのに時間がかかるようになってしまいますので、炎症ははやめに治す必要があります。
花粉皮膚炎であるかの診断や、今の症状や体質に合ったお薬の選択には、皮膚科専門医への受診が必要になります。皮膚科専門医では、花粉皮膚炎に対して、生活上のアドバイスをするとともに、炎症を抑えるステロイド外用薬や内服抗アレルギー薬を処方します。また、乾燥がある場合には保湿外用薬を処方します。アトピー性皮膚炎をお持ちの方では、花粉皮膚炎がアトピー性皮膚炎の悪化としてあらわれることが多く、この場合には、アトピー性皮膚炎に用いられる抗炎症外用薬が処方されることもあります。