小柳 礼恵 先生

予防的スキンケアのポイントや
洗浄・保湿・保護について

藤田医科大学 保健衛生学部
社会実装看護創成研究センター
講師
小柳 礼恵 先生

介護・看護の場でできるケア

介護や看護の場で皮膚に問題が起こった際に、「皮膚科を受診しよう」「何か塗り始めないと」と起きてから対処することが多くありませんか?しかし、問題が起きる前から皮膚の健康を保つことに意識を向けることで褥瘡や外傷、スキン・テアなどを予防することができます。また、冬の皮膚の乾燥、夏の紫外線によるトラブルから皮膚を守ることができます。そのために行うケアを「予防的スキンケア」といいます<図1>。

<図1>

予防的スキンケアのポイント

最も大切なことは、正常な皮膚の状態を維持すること、近づけること

皮膚は体の臓器の中で最も大きな臓器であり、その機能はとても重要です。皮膚の角層部分は外部の刺激から皮膚を守るバリア機能、保湿機能を持っていいます。その機能を維持するためには、適宜バリア機能、保湿機能を果たす成分を持つスキンケア用品によるケアをすることによりスキントラブルを起こしにくい状態にします(図1)。バリア機能がなくなることにより保湿機能も低下し外部刺激が入りやすくなります。この状況は、外部から化学的刺激(排泄物、医療用テープの粘着成分、細菌等)、物理的刺激(褥瘡の原因となる圧迫・摩擦・ずれ、外傷等)を受けやすくなります。

推奨スキンケア用品

  • ●バリア機能:クリーム基剤、油脂性基剤のスキンケア用品
    (※〇〇クリーム、〇〇軟膏と記載されていることが多い。ワセリン、スクワラン、〇〇油含有など成分表示に記載)
  • ●保湿機能 :セラミド含有のスキンケア用品
    (※〇〇ローション、〇〇ジェルクリームの記載が多い。セラミド配合や成分表示に記載されてる)

予防的スキンケアを目標とした洗浄・保湿と保護

●洗浄の目的

皮膚の洗浄は皮膚の清潔を保つため、皮膚の表面についた刺激物(油汚れ、皮脂、排泄物)を除去することが目的です。しかし、洗浄が皮膚に悪影響を及ぼすこともあります。皮膚のバリア機能を保つため皮脂を除去してしまう恐れがあり、乾燥の原因、皮膚への刺激物の浸透により痒みや炎症が生じます。そのため、皮膚を洗浄する際は、皮膚に低刺激である弱酸性の洗浄剤をよく泡だて汚れだけを除去することが重要です。

●保湿と保護の目的

保湿と保護は皮膚を健康な状態にするために必要です。保湿と保護をすることにより角質の間の隙間を埋め外的刺激から予防します。

保湿は水分が少なくなった角質の角質細胞間脂質(セラミド)を補充し角質細胞の隙間を埋めます<図2>。乳液、クリーム、ローションにより水分を補います。セラミドが含まれた製品はより効果的に保湿が可能になります。

保湿をして終了ではありません。保湿後、角層の水分を維持するために保護が必要です。保湿後、油分が含まれたクリーム、ワセリンなどの軟膏を塗布することで水分の蒸発を防ぎます。予防的スキンケアをする際は保湿・保護両方のケアを実施することが重要です。

<図2>

皮膚の構造

●乾燥した皮膚の特徴

乾燥した皮膚は保湿機能が減少し、乾燥し角層に隙間ができ炎症と自覚的な掻痒感、痛みが生じます<図3> 。そのような皮膚の特徴は外見的に皮膚の皮溝・皮丘がなくなり平坦になります。そのため、粘着テープを貼った際などには平坦部分の全体に粘着成分が付着し相乗効果で刺激が強く加わります。健康は皮膚とは皮膚の皮溝・皮丘が規則的であることから皮丘の部分に粘着テープなどが点で付着し刺激が分散します。(写真1:ドライスキン、写真2:健常皮膚)

<図3>

乾燥した皮膚の特徴
保湿前後の皮膚の状態

創傷がある患者さんのスキンケア

褥瘡を含めた創傷周囲には創からの滲出液の付着があります。滲出液の付着は皮膚の浸軟の原因ともなり外的刺激を受けやすくなります。滲出液中には細菌なども含まれ皮膚はアルカリ性に傾いています。そのため、炎症を起こしやすくなっています。創周囲皮膚の洗浄も重要であり創周囲の予防的スキンケアが創傷治癒を促進させます。日本褥瘡学会のガイドラインでも「弱酸性洗剤による洗浄を行なっても良い」とされています。必要時、創周囲の皮膚に滲出液が接触し浸軟を引きおこす状況がある場合は、洗浄後、ワセリンやストーマ用皮膜剤の使用も考えられます。

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