松本 直先生

ライフサイクルに伴う女性特有の皮膚トラブル

慶應義塾大学 産婦人科学教室
講師
松本 直 先生

 女性のからだは年代によってホルモンバランスが変化しますが、この変化に伴い女性特有のさまざまなからだの悩みが生じます。例えば、10代前半では卵巣からの女性ホルモン分泌の増加や月経の開始に伴い、外陰部、いわゆるデリケートゾーンのむれやかゆみなどの皮膚トラブルが出現します。また、20代から40代にかけては、妊娠や出産を契機にホルモンバランスが変化しやすく、さらに外陰部カンジダ症や子宮内膜症、子宮頸がんといった婦人科疾患の好発年齢にもあたります。このため、むれやかゆみに加えて、おりものの増加といった症状も認められ、最も女性特有の症状に対する悩みが多い世代となります。一方、50代以降においては、女性ホルモンの減少に伴う萎縮性腟炎によるかゆみや出血、尿漏れなどが認められやすくなります。このように女性特有のデリケートゾーンの症状に対しては、ライフサイクルやホルモンバランスを考慮した対応が必要となります。

 とくに比較的頻度の高い女性特有の皮膚トラブルとして、かゆみや皮膚の「ただれ」が挙げられ、その原因としておりものの増加があります。通常、おりものは雑菌が腟の中に入るのを防ぐために分泌されますので、健康な状態の方でも認められます。しかしながら、腟の中にさまざまな菌や病原体が増殖することが原因となっておりものが増加することもありますし、比較的若い世代では子宮頸がん、40代後半以降では子宮体がんや卵巣がんといった婦人科領域のがんが隠れていることもあり、原因に対する適切な検査や治療が重要となります。

 一方、生活習慣の改善で予防できる皮膚トラブルもあります。具体的な例を挙げると、カンジダ腟炎はカンジダ菌というカビが原因で発症しますが、このカンジダ菌は消化管や皮膚に通常認められるいわゆる常在菌です。しかしながら、体調不良や睡眠不足、過労といった免疫力の低下と局所の不衛生が原因となり、他の常在菌とのバランスが崩れカンジダ菌が増殖した結果、カッテージチーズ様のおりものの増加や痛みを伴う掻痒感などの症状が出現します。すなわち生活習慣を整えることでからだの免疫力を保ち、さらに毎日の入浴で正しい清潔ケアを行うことを心掛けることが大切です。

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