木村 有太子 先生

酒さ(しゅさ)とは?
赤ら顔の症状や原因、治療方法について

順天堂大学医学部 皮膚科学講座
木村 有太子 先生

1.酒さ(赤ら顔)とは?

酒さは「赤ら顔」とも呼ばれ、顔面に生じる原因不明の慢性炎症性疾患です。中年以降に発症しやすく、男性よりも女性に多い傾向があります。顔面に症状が発現するため、日常生活に支障をきたすこともあります。

赤ら顔

2.酒さの症状

酒さは、鼻や頬、額などに赤みやニキビのような症状がでる病気です。しかし、ニキビとは異なり、面皰と呼ばれる毛穴の入り口の角化や毛穴のつまりを伴いません。皮膚の症状に加えて、ほてりやヒリヒリ感などもみられます。

3. 酒さのタイプは4種類

酒さは臨床症状によって①紅斑毛細血管拡張型②丘疹膿疱型③鼻瘤④眼型の4型に分類されます。

①紅斑毛細血管拡張型(従来の分類:第1度酒さ)

顔が赤くなり、毛細血管の拡張がみられます。ほてりやヒリヒリ感があります。

紅斑毛細血管拡張型の症状例
紅斑毛細血管拡張型の症状例

②丘疹膿疱型(従来の分類:第2度酒さ)

赤い盛り上がりや膿のたまったニキビのようなぶつぶつがみられます。ほてりやヒリヒリ感があります。

丘疹膿疱型の症状例
丘疹膿疱型の症状例

③鼻瘤(従来の分類:第3度酒さ)

鼻を中心に腫瘤を形成します。

鼻瘤の症状例
鼻瘤の症状例

④眼型(従来の分類:眼合併症)

眼の充血、異物感やかゆみ、乾燥、まぶしさを感じます。

酒さの患者さんはこれらの病型が複数混在することがあります。

4. 酒さの典型的な進行

酒さは典型的には以下のように進行していくとされます。

  • ステージ1 :
    酒さの初期で、顔が繰り返し赤くなる、ほてるような症状が現れます。
  • ステージ2 :
    顔の皮膚表面の毛細血管拡張と赤みが常にみられる状態です。
  • ステージ3 :
    赤みやほてりに加え、赤い盛り上がりや膿のたまったニキビのようなぶつぶつがみられます。
  • ステージ4 :
    鼻が赤く膨らみ、鼻瘤が形成されます。

5. 酒さの原因

酒さの原因は明らかになっていませんが、臨床病態の観察から複数の増悪因子の関与が指摘されています。紫外線や高気温・低気温などの外部環境、精神的ストレスや食べ物などによる体の内部環境、その他、さまざまな要因が重なって発症すると考えられています。

6. 酒さの治療方法

酒さの治療は、①悪化因子の除去 ②スキンケア ③医学的治療 です。
まずは、ご自身の酒さが悪化する原因を特定し、その因子を避けることが大切です。また、適切なスキンケアも治療の一つです。適切に遮光(紫外線対策)し、低刺激性の洗顔料や保湿剤を使用します。医療機関を受診し、皮膚科専門医にご相談されるとよいでしょう。

悪化因子の除去
スキンケア
医学的治療

医学的な治療方法は、顔の赤みやぶつぶつ、毛細血管の広がりを改善する目的で治療を行います。主な治療方法は外用薬と内服薬による治療ですが、毛細血管拡張に対して自費治療によるレーザー治療・光治療を行うこともあります。

主な治療方法

皮膚の炎症をおさえることで、酒さの赤みやニキビのようなぶつぶつを改善するお薬では、赤みはゆるやかに改善し、症状が落ち着くまで時間がかかります。赤い盛り上がり、膿をもったぶつぶつは比較的早くに改善が認められ、一般的には数か月で改善がみられます。悪化因子により悪化することもありますが、治療をつづけることで悪化の程度をおさえることが期待できます。塗り薬に加え、抗生物質や漢方の内服薬を併用することもあります。また、アゼライン酸含有化粧品をケアとして使用することもありますが、使い始めに軽度の刺激感を感じる人もいます。

主な治療方法

レーザー治療・光治療

主に毛細血管拡張症状の改善を目的とする治療として、各種レーザーやintense pulsed light(IPL)が使用されています。

レーザー治療・光治療

7. 酒さを悪化させないためには

悪化因子を避けることが大切です。暑さ、寒さなどの生活環境、アルコールや香辛料など刺激の強い食べ物、医薬品や化粧品など、生活の中で原因となっているものを見つけ、それらをできるだけ避けた生活を心がけましょう。原因となるものがわかっている場合、特に悪化したくない時期にはなるべく避けるようにしましょう。

酒さに対するスキンケアはどの病型の酒さに対しても行います。適切に遮光し、低刺激性の洗顔料や保湿剤を使用しましょう。以下にスキンケアのポイントをまとめます。

クレンジング
  • 摩擦を避けるために、拭き取り用ではなく、洗い流し用を使用しましょう。
  • たっぷりの量を短時間でメイクになじませて乳化させて除去します。
  • クレンジング剤で顔のマッサージをしないように気をつけましょう。
クレンジング
洗顔
  • 1日2回の洗顔をしましょう。
  • 機械的な摩擦を避けるため、たっぷりの泡で優しく手のひらで洗いましょう。
  • すすぎには十分な量のぬるま湯を使用し、特にフェイスラインのすすぎ残しにも注意しましょう。
保湿
  • 刺激を感じない保湿力の高い保湿剤を使用しましょう。
  • 塗布するときは、たっぷりと手に取りおさえるようになじませましょう。
  • 刺激がなければ抗炎症作用のある成分が含まれる保湿剤も良いでしょう。
保湿
遮光
(紫外線対策)
  • 紫外線は酒さの悪化因子です。日焼け止め製剤など、一年を通して使用しましょう。
  • 石鹸などで容易に落とせるものが望ましいです。
  • 散歩や買い物、通勤などの外出であれば、SPF20~30程度、PA2+前後、炎天下でのレジャーやスキー場などでは、SPF40~50+、PA3+~4+を選びましょう。
日焼け止め製剤
カバーメイク
  • メイクで赤みを目立たなくすることはQOL(Quality of Life)の向上になります。化粧品は低刺激性のものを選択しましょう。

【参考文献】
1)林 伸和 ほか: 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023. 日皮会誌:133(3),407-450,2023
2)山﨑研志:スキルアップ!ニキビ治療実践マニュアル. 2-2 )酒皶の臨床, 診断と治療法. 全日本病院出版会:10-14, 2015
3)山﨑研志:皮膚科臨床アセット8 変貌する痤瘡マネージメント, 8 酒皶の対処法. 中山書店:37-41, 2012
4)菊池克子:酒さのスキンケア. Visual Dermatol, 13: 863-865, 2014.
5)大森遼子:酒さ・赤ら顔患者のスキンケア. BEAUTY #41, 5: 33-42, 2022.

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