多田 弥生 先生

肌にたっぷり水分補給して、トラブル回避

帝京大学医学部皮膚科学講座
准教授
多田 弥生 先生

 朝起きると顔の肌がカサカサ、ピリピリ。スネは粉をふいたようになっていて、あたたまったり、洋服がすれると、なんだかかゆくてボリボリかいてしまう。一体、お肌に何が起こっているのでしょう?実は肌に水分が足りないとこんなことが起きてしまうのです。

 皮膚は外側から表皮、真皮、皮下組織という構造になっています(図1)。このうち、表皮はさらに外側から角質層、顆粒層、有棘層、基底層からなる層構造によって形成されています(図2)。実はこのうち、角質層が外的な刺激から皮膚を守ったり、皮膚にうるおいを保つのにとても重要であることがわかっています。

皮膚の構造
▲図1 皮膚の構造
表皮の構造
▲図2 表皮の構造

 角質層を拡大すると、その表面は皮脂膜で覆われ、角質細胞間には天然保湿因子、角質細胞間脂質(セラミドなど)などがあります(図3)。こうした構成因子の多くは基底層から角質層へと細胞が押し上げられる間に作られていくのですが、年齢に伴い、だんだんに若い時ほどには上手に作られなくなってきます。遺伝的にうまく作れない人もいます。すると、角質層がごわごわした感じになり、肌がカサカサします。また、外的な刺激から皮膚を守る働きも弱まり、ちょっとした刺激をかゆみや痛みとして感じるようになってしまいます。

角質層の構造
▲図3 角質層の構造

 外的な刺激の中には、温度や湿度の変化、洋服やタオルによる物理的な「こすれ」なども含まれます。体を洗う時に、しっかりタオルなどに石鹸を染み込ませ、ゴシゴシこすって、最後にお肌をこすると「きゅっきゅっ」となると、綺麗に1日の汚れが落ちた気がする、という人はいませんか?実はこれは皮膚のバリアである角質層をとるやり方で、特にお肌の乾燥しやすい人にはお勧めできません。過度にタオルや研磨作用の強い石鹸でごしごし洗うと、大切な角層がとれてしまい、乾燥したり、刺激を感じやすくなったりするからです。体を洗う時には、手のひらで泡をつくって、やさしく、泡で洗ってあげることが重要です。これで十分、皮膚表面の汚れはとれます。洗ったあとはやさしく水気を拭きとり、保湿クリームなどを外用しておくと、そのあとのいろいろな刺激からある程度、皮膚表面が守られます。刺激という面では下着も直接皮膚にふれるものですから、少し気にしてみてもいいかもしれません。ゴワゴワした下着よりも肌触りの良い綿などの素材の下着の方が刺激が少なくていいでしょう。いつも決まった部位がかゆくなるようであれば、保湿に加えて、普段の生活で気がつかないような隠れた刺激がないかどうか、気にしてみてもいいかもしれませんね。

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