飯坂 真司 先生

スキンフレイルとは?
セルフチェックや予防のポイント

淑徳大学
看護栄養学部栄養学科
准教授
飯坂 真司 先生
 

1)スキンフレイルとは?

加齢とともに、肌には様々な変化が生じます。まず肌が乾燥し、白っぽい粉や薄皮が目立ち、滑らかさが失われ、がさがさした手触りになります。また、真皮と呼ばれる肌の弾力性を保つ組織も減少または変性します。その結果、肌がたるみ、しわが増えます。さらに肌表面が薄くなり、重度になるとティッシュペーパーのようにペラペラで裂けやすい状態になります。この状態はステロイドなどの薬剤の長期的影響もあります。知らない間に紫色のあざ(内出血)ができていたことはありませんか?これも肌の弾力性低下が関与しています。

加齢による肌の変化は誰にでも起こりますが、より進行した状態をスキンフレイル(皮膚のぜい弱化)と呼んでいます()。肌は外的な刺激(外力、化学物質、微生物など)から体の内部を守っています。しかし、スキンフレイルな状態では、日常や療養生活において外力(摩擦やずれ)の影響を受けやすくなります。その結果、特に入院・入所している高齢者の腕や脚にスキン-テア(皮膚裂傷)という傷ができやすくなると考えられています。
スキン-テアは、摩擦やずれによって皮膚表面が裂けて、めくれてしまう傷で、絆創膏をはがす時やベッド柵・車いすの部品に擦れたことが原因となって起こります。

加齢とスキンフレイルの関係

2)スキンフレイルが着目されるようになった理由

加齢に伴う肌のぜい弱化の要因として、これまで生理的老化(加齢そのものによる老化)と光老化(長期間の紫外線による変化)がありました。これに加えて、最近、筋肉の衰えに代表される心身のフレイル(虚弱)が、肌のスキンフレイルに影響することも知られてきました。
フレイルとは、簡単に言えば加齢により心身が老い衰えた状態、健康な状態と要介護状態の中間です1)。現在、地域での体操教室や配食サービスなど、フレイルに対する国や自治体の取り組みが盛んに行われています。今後は、体の衰えであるフレイルと合わせて、肌の衰えである「スキンフレイル」にもぜひ気をつけていただきたいと思います。

3)スキンフレイルのセルフチェック

スキンフレイルを簡単にチェックできる10個の項目があります(2)。このチェックリストの点数は、機械で計測した肌の水分量や弾力性と比例することがわかっています。ご自分の腕や脚の肌を見て、いくつあてはまるかチェックしてみてください。なお、肌をチェックする時には、明るい場所で眼鏡などをかけて、観察してください。スマートフォンなどのカメラで撮って拡大すると、肌の状態が見やすくなります。
項目1~4の4個は「はり低下」の項目です。1つ以上当てはまる場合には、肌の弾力性の低下が疑われます。
項目5~10の6個は、「乾燥」の項目です。3つ以上当てはまる場合には、乾燥肌の進行が疑われます。

高齢者のためのスキンフレイルチェックリスト

4)スキンフレイルを防ぐためのポイント

スキンフレイルの予防には、スキンケアと栄養が大切です。スキンケアは、体の外側から肌を守り、栄養は体の内側から肌を保つ材料となります。
スキンケアには、乾燥に対する保湿や外力からの保護(長袖着用、ぶつけやすい場所のカバーなど)などがあります。詳しいスキンケアについては、別のコラムを参考にしてください。
栄養として、まず、身体的なフレイルを予防するために、エネルギーとたんぱく質を十分に取りましょう。そのためには、1日3食しっかり取る、毎食にたんぱく質の多い食品(肉・魚・卵・乳製品・大豆製品)を1品以上取り入れる、を心がけましょう。例えば、素うどんではなく、卵や練り物、てんぷらを入れてみましょう。
魚は、筋肉の合成を助けるビタミンDの補給にも大切です。食が細くなっている方は、エネルギー効率のよい油(油を使った料理や、マヨネーズ・ごま油などの調味料)を積極的に料理に使ってみましょう。
また、肌の健康維持を助ける栄養素もあります。ビタミンCは、コラーゲン合成に関わる栄養素です。また、ビタミンCやEは、抗酸化ビタミンであり、光老化の原因となる酸化ストレスの軽減に関与すると考えられています。亜鉛は、肌の細胞の代謝・分裂に必要な栄養素です。ただし、亜鉛の摂りすぎは銅の吸収を妨げるなどの影響もありますので、過剰摂取には注意してください。最近では、コラーゲンペプチドと微量栄養素を含む補助食品と創傷や肌の変化に関する研究も報告されています。
詳しくは、かかりつけの医師や管理栄養士に相談してください。

引用文献
1)公益財団法人長寿科学振興財団. 健康長寿ネット. フレイルとは. https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/about.html
2)飯坂真司ほか. 日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌. 2018;22(3): 287-296.

さらに詳しい飯坂先生ご監修のスキンフレイル評価マニュアル等をご覧になりたい方はこちら 別窓
(外部サイトに飛びますのでご注意ください)

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