「湿疹とは何か?」という質問に答える際には,「皮膚を縦に切ると,ピンクの板蒲鉾(かまぼこ)と同じ構造をしています」という所から話をしています。蒲鉾の板に相当する部分が脂肪組織であり,その上の白い部分が真皮で,繊維が走っています。そして,一番上のピンクの部分が表皮で,この部分に起こる炎症を,湿疹あるいは皮膚炎と呼んでいます。
こうして考えると,湿疹とは何かという定義には,どんな刺激や反応によってそれが起こっているかは関係ないことになります。このため,湿疹反応はそれぞれ湿疹を誘発している原因に応じて,触れた物に対するかぶれが原因と考えられる場合には接触皮膚炎,皮脂を好む皮膚常在菌が関わって生じる場合は脂漏性皮膚炎,逆に冬場などで皮脂分泌が減少することによる乾燥を背景として生じたものには皮脂欠乏性湿疹といった病名がつけられます。
「アレルギーとは何か?」という質問についても考えてみましょう。アレルギーは医学的には4種類に分類され,そのうち,皮膚に発症するアレルギーは主にⅠ型とⅣ型が関与しています。それ以外にも実社会ではアレルギーという言葉で表されているものがあります。
私自身,レストランを予約する際には「生エビにアレルギーがあります」と伝えています。「メッキに対するアレルギーで,アクセサリーは銀製のものしかつけません」と言う人もいます。はては,「活字アレルギーなので,この文章を最後まで読むのはしんどいです」と主張する方もおられるでしょう。
花粉症や多くの食物アレルギーは,I型(即時型)アレルギーに分類されます。私自身の生エビに対するアレルギーもこれに当たります。
これに対して,湿疹に関わるアレルギーの多くは,メッキのアレルギー(その多くはニッケルに対するアレルギーですが)と同様に,IV型(遅延型)になります。IV型アレルギーの確認にはパッチテストが実施されますが,これは原因となる物質(抗原と呼びます)を皮膚に貼付し,その48時間後に湿疹が誘発されているかを判定する検査になります。抗原が皮膚に暴露されてからアレルギー反応が生じるまでに48時間を要することから,遅延型アレルギーと呼ばれます。
皮膚に生じるIV型アレルギー の多くは,皮膚に触れているものがかぶれを起こす接触皮膚炎になりますが,この接触皮膚炎は,正確には,一次刺激性とアレルギー性に大きく分類されることを理解しておく必要があります。例えば,石鹸やシャンプーによるかぶれを考える際に,石鹸やシャンプーに対してアレルギーを持たない人でも,ゆすぎが不十分でそれらが皮膚に長く貯留すれば,皮膚にかぶれを起こしてしまいます。灯油などの化学物質,あるいは傷口によかれと思って行う消毒液で生じることもあります。これが刺激性(接触)皮膚炎です。
一方,アレルギー性(接触)皮膚炎は,皮膚に接触した抗原を体内に位置する免疫を司る細胞(ランゲルハンス細胞など)が認識して,抗原を湿疹反応を起こす細胞へと伝えるというプロセスが起こっています。この過程で皮膚のバリア機能が障害されていると,抗原が容易に皮膚を通過して,本来であれば免疫担当細胞と出会う機会のないものが,抗原として認識されてしまうことになります。この「皮膚のバリア機能が障害されている」状態がまさに,湿疹なのです。
以上のことから,スキンケアを行う際に気をつけたい事は,湿疹が既にある時には,ステロイド外用薬や抗炎症作用のあるお薬をきちんと使って,皮膚の炎症を抑えてバリア機能を正してから,スキンケアを行う必要があるという事に尽きます。
傷があるところに良かれと思って実施している消毒液が,残留することで皮膚に刺激を引き起こし,結果として皮膚炎を誘発してしまうという話を紹介しましたが,同じ様に,良かれと思って行っているスキンケアをバリアが壊れた皮膚に行っていると,使っているスキンケア用品が皮膚を通過して抗原として認識され,アレルギー性皮膚炎を引き起こしてしまうことがあるからです。
スキンケアは,皮膚のバリアを壊さないために予防的に行う,あるいは湿疹が治った後に再び湿疹を起こさないように行うものであり,湿疹がある時には,きちんとその炎症を制御してあげる必要がある事を忘れないでください。
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