がん治療や手術を受ける方へ皮膚トラブルを予防するための毎日のスキンケア

がん治療や手術を受ける方へ
皮膚トラブルを予防するための毎日のスキンケア

監修:地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター
放射線治療科
部長
角 美奈子 先生
監修:がん・感染症センター 東京都立駒込病院
皮膚腫瘍科
医長
西澤 綾先生
監修:日本医科大学付属病院 看護管理室
急性重症患者看護専門看護師
皮膚・排泄ケア認定看護師
志村 知子 先生

はじめに

皮膚には、体内の水分蒸発を防ぐ「保湿」と、外部刺激から皮膚を守る「保護」の役割があります。この役割を皮膚のバリア機能といいます。バリア機能を保つためには、治療をはじめる前から日常的にスキンケアを行うことが大切です。治療をはじめると、皮膚に負担がかかり、思わぬ皮膚トラブルを招くことがあります。日常的に適切なスキンケアを行っていると、そのような皮膚トラブルを予防・軽減することができます。
正しいスキンケア方法を身につけ、皮膚をすこやかに保ちましょう。

健康な皮膚は、水分が保たれ、外部の刺激物質がブロックされています。皮膚のバリア機能を正常に保つためにも適切なスキンケアを行い、3大保湿因子をしっかりと補いましょう。

スキンケアの基本

洗浄 保湿 保護

健康な皮膚の状態

健康な皮膚の状態

3大保湿因子

天然保湿因子

角質細胞の内部に水分を補給します。

天然保湿因子

セラミド(細胞間脂質)

水分保持作用が高く、角質細胞の間を埋めてうるおいを保ってくれます。

セラミド(細胞間脂質)

皮脂

水分の蒸発を防ぎます。

皮脂

皮膚がもろく弱くなる主な原因

さまざまなことが原因で皮膚のバリア機能が低下すると、皮膚はもろく弱くなります。

  • 加齢
  • 活動性の低下(じっとしていて刺激に対する反応がない状態)
  • 屋外作業や外出などによる日焼け(紫外線)
  • 脱水を含む栄養不足(バランスの悪い食事)
  • 認知機能の低下(手足をぶつけやすく、スキンケアも自力で行いづらい)
  • 長期間のステロイド薬や抗凝固薬の使用
  • 抗がん剤や分子標的薬による治療
  • 放射線治療(角層内水分量・皮脂量の減少)
  • 透析治療

もろく弱くなった皮膚の状態(バリア機能が低下している状態)

乾燥かんそう

皮脂や汗の分泌が少なくなった状態。


乾燥

紫斑しはん

皮膚の一部が紫色になり、斑(あざ)になった状態。

紫斑

水疱すいほう

水ぶくれ。液体がたまって膨らみが起こった状態。


水疱

浮腫ふしゅ

むくみ。皮膚や皮下組織(皮膚の下部)に水分がたまった状態。

浮腫

写真提供:西澤 綾 先生

がん治療や手術で現れるさまざまな皮膚トラブル

皮膚トラブルなどの見た目に現れる副作用は、薬の種類や投与量、治療期間によっても異なります。また、症状の有無や発現時期、種類などには個人差があります。

TROUBLE 1
抗がん剤治療・放射線治療で起こりやすい皮膚トラブル

皮膚の乾燥、湿疹、紅斑、手足症候群、色素沈着、爪囲炎、ざ瘡様皮疹、放射線皮膚炎などが、皮膚トラブルとして現れやすくなります。治療をはじめる前や薬が変更になるとき、手術が決まったときに、どのような症状が現れやすいか主治医や看護師に確認しておきましょう。

湿疹しっしん

吹き出物など、見てわかるほど皮膚が変化した病変。

湿疹

紅斑こうはん

皮膚の一部が赤くなり、斑(あざ)になった状態。


紅斑

手足症候群てあししょうこうぐん

手のひらや足の裏などに生じるしびれや痛み、むくみ、赤み、皮膚のガサガサ、ひび割れ、水疱などの病変。

手足症候群

色素沈着しきそちんちゃく

皮膚や爪が黒ずんだり、一部で点状に黒くなる症状。


色素沈着

爪囲炎そういえん

爪の周りが赤く腫れ、熱さや痛みを感じる炎症。


爪囲炎

ざ瘡様皮疹ざそうようひしん

主に顔面と前胸部、背部、前腕などに現れるニキビのような病変。

ざ瘡様皮疹

放射線皮膚炎ほうしゃせんひふえん

放射線があたる皮膚に起こる赤みや色素沈着などの炎症。びらんや表皮剥離に進むことがある。

放射線皮膚炎
放射線皮膚炎

写真提供:角 美奈子 先生、西澤 綾 先生

TROUBLE 2
手術後に起こりやすい皮膚トラブル

医療機器や医療用テープの使用により、摩擦やズレが生じて皮膚への負担が大きくなります。たとえば、カテーテルを入れているところ、酸素マスクがあたるところ、耳にかけるゴム紐があたるところは、それらの刺激により、皮膚が赤くなる、かゆくなる、腫れる、出血するなどの皮膚トラブルが起こりやすくなります。
治療を開始する前から日常的にスキンケアを行い、バリア機能を整えることで、皮膚トラブルが起こりにくい皮膚を目指しましょう。

皮膚トラブルを予防するための毎日のスキンケア

皮膚に負担をかけない、やさしいスキンケアを心がけましょう。

洗浄 清潔に保つ

洗顔、入浴、シャワーなどで皮膚を清潔に保ちましょう

1.泡立てる石鹸・ボディソープを手にとり、空気を加えながら泡立てます

  • 手のひらいっぱいの大きな泡をつくります。
  • 泡のクッション効果で、皮膚との摩擦を和らげ、汚れも落ちやすくなります。
  • 泡立てることですすぎも早くなり、皮膚への負担が少なくなります。
  • 泡立てネットを活用すると良いでしょう。液体石鹸の場合は、ビニール袋に少量の水と一緒に入れて素早く振ることでも簡単に泡ができます。
  • 泡タイプの洗浄剤も便利です。

固形石鹸や液体石鹸を泡立てずに、直接体につけることはやめましょう。

泡立てる

2.洗う泡でやさしくなでるように洗います

  • 皮脂の多い顔やワセリンなどの油性の保湿剤などを塗ったところは、汚れとして残りやすいので丁寧に洗いましょう。
  • 関節やシワの多い部分は、皮膚をのばすようにして洗います。膝の表と裏も忘れずに洗いましょう。
  • 皮膚トラブルがあるところは泡で洗うイメージで、こすらずに泡で覆います。
  • 体を洗いながら、皮膚の状態をよく確認しましょう。

ナイロン素材や目の粗いタオル、スポンジの使用は避け、爪はあらかじめ短く切り、手で泡を転がすように洗いましょう。

 
洗う

3.流すぬるめのお湯・弱めの水圧で流します

  • ぬるめのお湯で十分にすすぎます。
  • お湯の温度は38~40度くらいが良いでしょう。
  • 弱めの水圧で、すすぎ残しがないように、丁寧に汚れと泡を洗い流しましょう。

熱すぎると皮脂を落としすぎてかゆみの原因になるので気をつけましょう。

 
流す

4.拭くやわらかいタオルで、軽く押さえるように拭きます

  • こすらずに、やさしく拭くことが大切です。
  • やわらかいタオルで体を包み込み、軽く押さえるようにして、タオルに水分を吸収させます。
 
拭く

洗浄剤を選ぶポイント

  • 石鹸、ボディソープ、シャンプーなどの洗浄剤は、低刺激性で弱酸性のものを。可能であれば無香料・無色素のものを選びましょう。
  • 泡立てが苦手な方には、最初から泡状になったタイプが便利です。
  • 皮脂を落としすぎず、適度なうるおいを残すタイプがおすすめです。
 

保湿 うるおいを与える

皮膚にうるおいを与え、保湿を心がけましょう。治療をはじめる前から日常的に保湿を行うことが大切です。

1.洗浄後は、保湿剤をできるだけ早く塗る

  • 皮膚のバリア機能を補うためにも保湿は重要です。
  • 洗った後は皮脂が洗い流された状態です。お風呂上がりや保清後、10分以内を目安に保湿できると良いでしょう。
洗浄後は、保湿剤をできるだけ早く塗る

2.手のひらで押さえるようにして十分量をきちんと塗る

  • 保湿剤は十分量を塗ることで効果を発揮します。
  • 面積が広いところは、保湿剤を手のひらにのせ、こすらず、やさしく押さえるように塗ります。
  • とくに丁寧に塗りたいところは保湿剤を数箇所に置き、手のひらでやさしく広げて塗っていきましょう。
  • 乾燥しやすいところは、とくに十分に塗るように心がけましょう。
  • 関節やシワがある部分は、皮膚をのばして塗ります。
  • 1日2回程度塗ると良いでしょう。
手のひらで押さえるようにして十分量をきちんと塗る

3.普段からこまめに保湿する

  • 入浴後やシャワー後以外にも、皮膚の乾燥を感じる前に、こまめな保湿を心がけましょう。
  • ボディクリームやハンドクリームなどを身近なところに置いて、いつでも保湿できるようにしておきましょう。
 
普段からこまめに保湿する

お風呂に入るときのポイント

  • お湯は38~40度、湯船につかるのは10分程度で。体を温めすぎるとかゆみが起こりやすくなります。
  • 入浴すると皮膚の汚れが落ちやすくなり、保湿剤が肌に浸透しやすくなります。
  • 保湿成分が入った入浴剤を使用すると、手が届きにくい背中のスキンケアが容易です。
 
お風呂に入るときのポイント

保湿剤は自分に合ったものを

保湿剤
  • バリア機能を保つためには、保湿剤選びも重要です。
  • 天然保湿因子・セラミド・皮脂の働きを持つ成分がバランス良く配合された保湿剤を選ぶのが理想的です。

保湿剤を選ぶポイント

治療中の皮膚は敏感なので市販の軟膏やクリームをつけたり化粧品をつけたりせず、まず主治医や看護師に相談しましょう。
保湿剤にはさまざまな種類があります。のびの良いものやベタつかないものもあり、症状や好み、季節(さっぱりタイプは夏・しっとりタイプは冬)などに合わせて、使いやすいものを選ぶことができます。

スプレー
スプレー
  • 広い範囲や手の届きにくい所にも使用しやすい。
  • 使用量を正確に把握しにくい。
泡
  • 柔軟に変形するので広い範囲にも塗りやすい。
  • 使用感が良い。
ジェル
ジェル
  • 使用感が良く、良くのびる。
  • たれにくい。
クリーム
クリーム
  • ベタつきが少なく使用感が良い。
  • 水で洗い流せる。
軟膏
軟膏
  • 皮膚の保護作用が高く、刺激性が低い。
  • ベタつくため、洗い流しにくい。
保湿剤選び
保湿剤選び

頭皮ケアのポイント

  • デリケートな部位のため、低刺激性・弱酸性のシャンプーを選びましょう。
  • ニオイが気になる場合は、消臭有効成分が配合されたシャンプーを活用するのもおすすめです。
  • ウィッグによる蒸れが頭皮への刺激になることもあります。室内にいるときやちょっとしたお出かけでは、バンダナやスカーフを利用するのも良いでしょう。
  • ウィッグはお手入れして清潔に保ちましょう。ウィッグ専用のスプレーかシャンプーでお手入れし、しっかり乾燥させます。
    ※ウィッグ毎にお手入れ方法が異なります。ご使用のウィッグのお手入れ方法を確認しましょう。
頭皮ケアのポイント
[脱毛中のヘアケア]

治療によっては、髪が切れやすくなるなど髪質の変化や、脱毛が起こる場合があります。脱毛を気にして洗髪をためらうことがあるかもしれませんが、頭皮は顔以上に皮脂があり、汗の分泌量も多いところです。余分な皮脂や汗などを取り除かないと、毛穴が詰まり、皮膚炎になる恐れもあります。とくにウィッグをつけているときは注意が必要です。
たとえ毛髪が抜けてしまっても、清潔に保てるように、しっかりと頭皮を洗うように心がけましょう。

保護 外部刺激から守る

皮膚への刺激を避けましょう

衣服を選ぶ

  • 通気性・吸湿性のよい素材を選びましょう。
  • 皮膚に直接触れる下着などはなるべく綿素材を。化学繊維ができるだけ少ない素材を選びましょう。
  • 皮膚への刺激を少なくするには、縫い目が少なく、ゆったりとした衣服がおすすめです。
  • 下着の縫い目が皮膚にあたり刺激を感じる場合は、下着を裏返しにして着用しましょう。
  • 衣類を洗濯する場合は、すすぎをしっかりと行いましょう。
  • ぶつかったり、こすったりすることで、皮膚に直接刺激が加わらないように長袖や長ズボンを着用しましょう。
外部刺激から守る

日差しから守る

日差しから守る
  • 季節を問わず、紫外線(UV)の影響で皮膚が乾燥しやすくなるので、日差しから皮膚を守り、乾燥を防ぎましょう。
  • 日焼けは色素沈着も起こしやすくします。日焼け防止に、日傘や帽子、手袋、長袖などを身に着けましょう。
  • 日焼け止め剤は、低刺激性で紫外線吸収剤が使用されていないタイプを選びましょう。

髪の毛や髭剃りにも気をつける

  • 髪の毛は皮膚にあたるとかゆくなることがあるので、皮膚に触れないような髪型にしましょう。
  • 髭剃りは、電気カミソリを使用したり、フォーム剤を使用しましょう。
  • かゆくても、かかないようにしましょう。
  • 皮膚の貼布剤をはがすときは、ゆっくり行います。
  • 食事は栄養バランスを考え、しっかりと摂りましょう。

体の隅々まで毎日観察しましょう

日付を記入し、スキンケア実施状況や皮膚トラブルについて当てはまるところがあれば✓をつけましょう。

スキンケア実施状況や皮膚トラブル

皮膚トラブルを早めにみつけるためにも、皮膚トラブルの項目に✓がついた場合は、主治医または看護師にご相談ください。

治療や手術に向けてご準備いただくスキンケア用品

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スキンケア講座

赤ちゃんの肌

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