皮膚には、体内の水分蒸発を防ぐ「保湿」と、外部刺激から皮膚を守る「保護」の役割があります。この役割を皮膚のバリア機能といいます。バリア機能を保つためには、治療をはじめる前から日常的にスキンケアを行うことが大切です。治療をはじめると、皮膚に負担がかかり、思わぬ皮膚トラブルを招くことがあります。日常的に適切なスキンケアを行っていると、そのような皮膚トラブルを予防・軽減することができます。
正しいスキンケア方法を身につけ、皮膚をすこやかに保ちましょう。
健康な皮膚は、水分が保たれ、外部の刺激物質がブロックされています。皮膚のバリア機能を正常に保つためにも適切なスキンケアを行い、3大保湿因子をしっかりと補いましょう。
角質細胞の内部に水分を補給します。
水分保持作用が高く、角質細胞の間を埋めてうるおいを保ってくれます。
水分の蒸発を防ぎます。
さまざまなことが原因で皮膚のバリア機能が低下すると、皮膚はもろく弱くなります。
皮脂や汗の分泌が少なくなった状態。
皮膚の一部が紫色になり、斑(あざ)になった状態。
水ぶくれ。液体がたまって膨らみが起こった状態。
むくみ。皮膚や皮下組織(皮膚の下部)に水分がたまった状態。
写真提供:西澤 綾 先生
皮膚トラブルなどの見た目に現れる副作用は、薬の種類や投与量、治療期間によっても異なります。また、症状の有無や発現時期、種類などには個人差があります。
皮膚の乾燥、湿疹、紅斑、手足症候群、色素沈着、爪囲炎、ざ瘡様皮疹、放射線皮膚炎などが、皮膚トラブルとして現れやすくなります。治療をはじめる前や薬が変更になるとき、手術が決まったときに、どのような症状が現れやすいか主治医や看護師に確認しておきましょう。
吹き出物など、見てわかるほど皮膚が変化した病変。
皮膚の一部が赤くなり、斑(あざ)になった状態。
手のひらや足の裏などに生じるしびれや痛み、むくみ、赤み、皮膚のガサガサ、ひび割れ、水疱などの病変。
皮膚や爪が黒ずんだり、一部で点状に黒くなる症状。
爪の周りが赤く腫れ、熱さや痛みを感じる炎症。
主に顔面と前胸部、背部、前腕などに現れるニキビのような病変。
放射線があたる皮膚に起こる赤みや色素沈着などの炎症。びらんや表皮剥離に進むことがある。
写真提供:角 美奈子 先生、西澤 綾 先生
医療機器や医療用テープの使用により、摩擦やズレが生じて皮膚への負担が大きくなります。たとえば、カテーテルを入れているところ、酸素マスクがあたるところ、耳にかけるゴム紐があたるところは、それらの刺激により、皮膚が赤くなる、かゆくなる、腫れる、出血するなどの皮膚トラブルが起こりやすくなります。
治療を開始する前から日常的にスキンケアを行い、バリア機能を整えることで、皮膚トラブルが起こりにくい皮膚を目指しましょう。
皮膚に負担をかけない、やさしいスキンケアを心がけましょう。
洗顔、入浴、シャワーなどで皮膚を清潔に保ちましょう
固形石鹸や液体石鹸を泡立てずに、直接体につけることはやめましょう。
ナイロン素材や目の粗いタオル、スポンジの使用は避け、爪はあらかじめ短く切り、手で泡を転がすように洗いましょう。
熱すぎると皮脂を落としすぎてかゆみの原因になるので気をつけましょう。
皮膚にうるおいを与え、保湿を心がけましょう。治療をはじめる前から日常的に保湿を行うことが大切です。
治療中の皮膚は敏感なので市販の軟膏やクリームをつけたり化粧品をつけたりせず、まず主治医や看護師に相談しましょう。
保湿剤にはさまざまな種類があります。のびの良いものやベタつかないものもあり、症状や好み、季節(さっぱりタイプは夏・しっとりタイプは冬)などに合わせて、使いやすいものを選ぶことができます。
治療によっては、髪が切れやすくなるなど髪質の変化や、脱毛が起こる場合があります。脱毛を気にして洗髪をためらうことがあるかもしれませんが、頭皮は顔以上に皮脂があり、汗の分泌量も多いところです。余分な皮脂や汗などを取り除かないと、毛穴が詰まり、皮膚炎になる恐れもあります。とくにウィッグをつけているときは注意が必要です。
たとえ毛髪が抜けてしまっても、清潔に保てるように、しっかりと頭皮を洗うように心がけましょう。
皮膚への刺激を避けましょう
日付を記入し、スキンケア実施状況や皮膚トラブルについて当てはまるところがあれば✓をつけましょう。
皮膚トラブルを早めにみつけるためにも、皮膚トラブルの項目に✓がついた場合は、主治医または看護師にご相談ください。
アトピー肌・乾燥肌・
敏感肌
紫外線トラブル・シミ・
エイジング
赤ちゃんの肌
アトピー肌・乾燥肌・敏感肌
紫外線トラブル・シミ・エイジング
赤ちゃんの肌