「乾燥肌」という状態はどのようなものでしょうか?一般的に肌にふれたときにカサカサしている、突っ張る感じがあるというような肌のことをイメージすることが多いと思います。実際にはそれだけでなく、感覚が敏感になっている状態の肌やバリア機能がどんどん低下している状態の肌、オイル洗顔などにより肌内部で必要な水分が不足している状態の肌も含まれます。
正常な皮膚は、肌の一番外側にある表皮の角層によって守られています。角層はケラチンや脂質などさまざまな物質で作られており、ラップフィルムのように体全体を覆っているものです。この角層の角質細胞や角層細胞間脂質、天然保湿因子(NMF)が、皮膚内部の水分が蒸発していくのを防いでいます。また皮脂や汗の成分にも表皮を覆う機能があり、皮膚が乾燥しないように守っています。
乾燥肌の原因として、加齢による皮膚生理機能の低下・冬場など湿度の低い環境・エアコンなどによる空気の乾燥・紫外線によるダメージ・不適切なスキンケアなどがあげられます。これらにより生じた乾燥肌では、単に見ための皮膚が乾燥しているだけでなく、皮膚バリア機能も低下します。皮膚のバリア機能が低下すると、外界からの花粉やほこり、微生物などが侵入しやすくなります。また、しばしばかゆみを伴うため、ひっかくことで、さらなる皮膚バリア機能の破綻をきたし、悪循環になることもあります。そのため、日々のホームケアが大切になります。
乾燥肌にならないようにするため、毎日のスキンケアや生活習慣の見直しなど、が必要になります。基本は皮膚を清潔にし、保湿をすることです。
石鹸・洗浄剤の主成分は界面活性剤であり、過度の使用やすすぎ残しは皮膚の乾燥を悪化させる可能性があります。なるべく低刺激性の石鹸を選ぶようにしましょう。ナイロンタオルやブラシの使用は角層からの水分の蒸発を増加させ、皮膚を乾燥させやすくします。石鹸・洗浄剤はよく泡立てて泡を手のひらにとり、優しく洗うようにします。特に乾燥が強い部分の石鹸・洗浄剤の使用は最小限にし、洗い残しにも注意しながら時間をかけすぎないことが大切です。クレンジングでオイルを使用する方もいますが、適切な量を使用せずにかえってこすり過ぎてしまい、良くない場合があります。肌の乾燥を感じている時は、洗浄しやすいくらいのメイクにすることで、洗顔時の肌への負担がへります。
また、熱すぎるお湯や長時間の入浴も控えましょう。適温38℃くらいで湯船につかる時間は10-15分くらい。低刺激性で保湿効果のある入浴剤の使用をおすすめします。
入浴後は角層から水分が蒸発するため、直後でなくてもよいですが、保湿剤をなるべく早く外用することが大切です。パジャマ等衣服を着てからでは保湿に時間がかかることもあるので、ご家族が塗ってあげる場合は入浴直後のほうが簡単です。塗られるのを嫌がるお子さんの場合には、思い切って朝の着替えの際、パジャマを脱がせながら塗るのも効果的です。
冬季は暖房により室内の相対湿度が低下するので、適宜加湿器等による対策も必要です。ウールやごわごわした素材などの衣類の刺激や髪の毛の先端部の接触など軽微な刺激でもかゆみを生じるため、肌に触れる部分にはそのような刺激がない衣類を選択することもおすすめします。
長時間の日光にあたることによって角層からの水分蒸発量が増加することがあります。太陽光への暴露をさけ、とくに夏季は紫外線量の多い10-14時の外出の際は帽子の着用、サンスクリーン剤の使用をおすすめします。
その他、過度のダイエットや飲酒、喫煙、睡眠不足なども肌のターンオーバーのバランスを崩し、乾燥肌になりやすいことがあり、注意が必要です。
乾燥肌の改善には正しい保湿が必要です。かゆみがある時、ひっかき傷がある時、皮膚のかさつきが強い場合は医療用の保湿剤が必要になります。軽い乾燥やかゆみがないような時は乾燥肌の原因になる環境をさけ、医薬部外品や化粧品の保湿剤を使用することでも対応が可能です。保湿をすることで、皮膚の水分が失われにくくなり、乾燥肌が改善すると、壊れていたバリア機能も修復がみられます。保湿剤の種類には大きく2種類があります。
モイスチャライザー
吸湿性の高い水溶性成分を含み直接的に皮膚の角層に水分を補うもの。(ヘパリン類似物質、尿素、セラミド、ヒアルロン酸)
エモリエント
皮膚に油脂膜を作ることで水分の蒸散を抑え、間接的に角層の水分を増加させるもの。(ワセリンなどの軟膏基剤・天然油脂など)
モイスチャライザーとエモリエントは成分も作用機序も使用感も異なります。モイスチャライザーは“肌に浸透して水分をたくわえる感覚”、エモリエントは皮膚にしっかり付着し、“肌に蓋をする感覚”と言えばわかりやすいでしょう。どちらを選ぶかではなく、目的によって使い分けることがよいでしょう。
医療用保湿剤では、1回あたりの目安としてFTU(finger-tip unit)が提唱されています。1FTUはチューブから軟膏を大人の人差し指の先端から第一関節まで押し出した量(約0.5g)でこの量を大人の手のひら2枚分の面積に塗布するものです。1日あたりの外用回数は1回よりも2回の方が高い保湿効果を期待できます。
医療用保湿剤以外では一般用医薬品、医薬部外品や化粧品の保湿剤など多くの種類があります。これらは、医療用と同じ成分を有するものやセラミドのような医療用医薬品と異なる成分のものもあります。使う人が使用感で満足しつつ、安心かつ継続して使用できる製品を選ぶことがよいでしょう。
かゆみや赤み、ぶつぶつとした発疹がでてきたときは炎症のサインです。アトピー性皮膚炎の症状や塗っているものによるかぶれの症状の場合もあります。そのようなときは我慢なさらずに皮膚科専門医にぜひご相談ください。
アトピー肌・乾燥肌・
敏感肌
紫外線トラブル・シミ・
エイジング
赤ちゃんの肌
アトピー肌・乾燥肌・敏感肌
紫外線トラブル・シミ・エイジング
赤ちゃんの肌