抗がん剤や放射線治療など、がん治療に起因する外見の変化は、がん患者さんの心に大きな負担となっており、がん患者さんが安心して社会生活を送れるようなサポートの充実が求められています。早くからアピアランスケアの可能性に着目し、2024年の開院当初から診療内容に組み込んでいるド・ケルコフ麻衣子先生に、がん治療におけるアピアランスケアの重要性について教えていただきました。
アピアランスケアは「医学的、整容的、心理社会的支援を用いて、外見の変化に起因するがん患者の苦痛を軽減するケア」と定義されていて、近年、国が注力しているがん支援のひとつです。アピアランスケアのニーズが高まっている背景には、がん医療の進歩による生命予後の延長、治療を継続しながら社会生活を送る患者数の増加、薬物療法の進歩による副作用の皮膚傷害症例の増加などがあります。
日本のがん治療は「がん対策推進基本計画」をもとに進められますが、2023年に「第4期がん対策推進基本計画」を閣議決定し、全体目標として「誰一人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指す」ことを掲げました。今回の計画では、このような社会背景も考慮され、がん患者の社会的な問題への対策(サバイバーシップ支援)の中に初めてアピアランスケアについて言及しました。そして、がん拠点病医院を中心にアピアランスケアに関する相談体制や情報提供体制の構築を図る意向を示しています。
アピアランスケアとは、がん治療による外見の変化に苦しんでいる患者さんやその家族が、自分らしく生活できるよう支援するケアです。抗がん剤や放射線治療で皮膚に負担がかかると、バリア機能が低下してターンオーバーが乱れ、肌が乾燥しやすくなります。乾燥肌になると刺激に弱くなりますので、紫外線などの悪性因子の除去はもちろんですが、保湿や保護、保清など日頃のスキンケアがとても重要です。こういったアドバイスはがん治療病院で指導してもらえますし、薬物療法による皮膚や爪の炎症についてはアピアランスケアセンターやアピアランス外来など専門の相談機関が新設されサポートが強化されつつあります。
当院に来院される患者さんは前述した皮膚症状に対する治療だけではなく、もう少し踏み込んだ〝医療〞を求めておられます。例えば、抗がん剤の一部はメラニン色素を刺激し高度な色素沈着を起こします。その場合は、がん治療中であってもがん治療での使用薬剤を確認し、主治医に承諾を得た上で、安全な範囲で〝美しくなるための美肌治療(内服、外用、レーザーなど)〞を行っています。また、化学療法誘発性脱毛症といった髪やまつ毛の治療、手術痕のケロイド、剥がれそうな爪の除去など、医療介入が必要なことも多くあります。
「顔のくすみを美容クリニックで治療したいが、どのようなレーザーならやっていいのか」、「ムダ毛の脱毛を始めようと思った矢先にがんになってしまった。治療はひと段落したが、いつから始められるのか」など、がん治療がひと段落された患者さんの〝美しくなりたい〞という美容に関した悩みに専門的に向き合う医療機関が足りていません。治療を乗り越え、社会生活を前向きに過ごそうとしていらっしゃる患者さんをサポートできるよう、私達医師も積極的に情報発信を続けていきたいと思っています。
アトピー肌・乾燥肌・
敏感肌
赤ちゃんの肌
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