入浴が原因で乾燥肌が悪化する?
皮膚は、表皮と真皮に分かれ、表皮は、基底層→有棘層→顆粒層→角層にわかれ、一番外側に角層があります。角層は、湿度を維持する機能があり、たくさんの水分を含んでいます(図)。
入浴すると、角質に影響し、時間が経つと水分が蒸散して、カサついた状態になります。そのため、入浴後は皮膚に粉がふいた症状と痒みを伴います。
図
乾燥肌を悪化させる入浴方法
日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021に、適正な入浴方法が記載されています1)。
お湯の温度に関しては、皮膚において42℃以上で掻痒が惹起されること、36~40℃が皮膚バリア機能回復の至適温度であることから、おおむね38~40℃がよいとされています。また、長時間の入浴も皮膚のダメージを起こすために適切ではありません。
入浴時に押さえておくべきポイント
入浴は疲れやストレス解消のため、大変効果的です。一方、入浴により乾燥が悪化する場合もあります。以下のことに注意しましょう。
- ①入浴後にほてりを感じさせる沐浴剤・入浴剤は避けましょう。
- ②使用する石鹸・洗浄剤の種類は、低刺激性・低アレルギー性、色素や香料などの添加物ができるだけ少ないものを選択しましょう。
- ③ナイロンタオルでゴシゴシ擦ると皮膚をキズつけてしまいます。そのためよく泡立てた石鹸を手のひらに取り、やさしく洗いましょう。
- ④洗浄剤が皮膚に残らないように十分にすすぐことも大切です。
入浴後はスキンケアをしっかりと
入浴後は角層から水分が蒸散するため、直後でなくても良いですが、保湿剤を塗りましょう。最近の研究では、保湿剤を塗るタイミングとしては、保湿剤を入浴1分後に塗った群と1時間後に塗った群とを比較した結果、保湿剤の種類によらず角層水分含有量に有意差は認めなかったと報告されています2)。
どの保湿剤が良いか?
保湿剤は大きく分けて2種類あり、①皮表の保湿を主としたものと、②皮表の保護を主としたものがあります。
皮表の保湿を主としたものは、低下している皮表の保湿性を補うために、保湿性の高い親水性軟膏や吸水性軟膏を使用します。保湿性の高い親水性軟膏と吸水性軟膏としては、ヘパリン類似物質含有製剤や尿素製剤が挙げられます。皮表の保護をしたい場合には、傷害された皮膚のバリア機能を補充・補強または代償するために、白色ワセリン、亜鉛華軟膏などの皮膚に対して保護作用がある油脂性軟膏を使用します1)。医薬品や化粧品も同様に、前述の2つに分類されています。効果は同じですので、使いやすいものを選択してください。また、塗り方にもコツがあります。“べったり”と塗ってください。
目安は、腕に“べったり”塗った後、ティッシュペーパー1枚を机におき、腕をティッシュペーパーにつけて、持ち上がる程度です(写真)。
片腕で、保湿剤を1.5g使うことが目安です。全身に塗布した場合、1回のスキンケアで大人では20gを目安にしましょう。
写真
最後に
入浴は汗や汚れを落とし、リラックスする効果がある、日本人の良き文化です。しかしあやまった習慣で、肌の乾燥などを悪化させてしまいます。お湯の温度に気をつけ、スキンケアを欠かさず行うことで、スベスベした皮膚を維持しましょう。
参考文献
1)アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021:日皮会誌:131,2691-2777.2021
2)野澤 茜、大谷道輝、松元美香ほか:保湿剤の効果に及ぼす入浴と塗布時期の関係:日皮会誌121:1421-1426.2011