清藤 友里絵 様

発汗とスキンケア

東邦大学医療センター佐倉病院
看護師長
皮膚・排泄ケア認定看護師
清藤 友里絵 様

 地球の温暖化により日本の夏は38℃を超える猛暑となる地域が増えています。また、風邪をひいて高熱を出した経験は多くの方々にあると思います。人には、身体、特に熱に弱い脳細胞を冷やすため、体温を37度弱に維持する機能があります。その大きな役割を担っているのが「汗」です。汗は全身に分布する汗腺から排出され、皮膚の表面に付着した汗が蒸発するときに身体の熱は奪われ体温が低下します。その他にも汗には、皮膚表面を弱酸性に保つことで細菌の繁殖を抑制したり、体内の老廃物(アンモニア、尿素、乳酸など)を排泄するなど重要な役割があります。

 しかし、汗は時に皮膚に対して悪い影響をおよぼすことがあります。最も気を付けたいことは汗を放置することです。汗は皮膚に付着して時間が経つと皮膚の表面がアルカリ性に傾き、細菌が繁殖しやすくなります。また、皮膚の表面(角質層)の細胞が浸軟(ふやけた状態)することで、擦るなどの外力で傷つきやすくなったり、化学物質や細菌などが皮膚の深部に侵入し、皮膚障害が生じやすくなったりします。さらに、汗が蒸発する際に、角質細胞にある天然保湿成分が一緒に奪われるため、皮膚が乾燥することもあります。汗の付着による皮膚障害は、特に皮膚と皮膚が密着しやすい腋窩(脇の下)・鼠径部(股のつけ根)・女性の乳房などや紙おむつを着用している臀部(お尻)、寝たきりの方の背部などに発生しやすくなります。

 このように汗をかいて長時間放置したときの皮膚への影響を考えますと、皮膚の清潔を保つ必要性をご理解いただけると思います。では、具体的な清潔ケアのポイントについて幾つか紹介します。

  • ・汗をかいたら放置せず、こまめに拭きとります。
  • ・寝たきりの場合は、パジャマやシーツを適宜交換しましょう。パジャマを頻回に交換することが難しい場合は、タオルなどを挟み交換するとよいでしょう。
  • ・タオルは一般に熱放散性が低いものが多いため、熱がこもりやすく発汗を助長することがあるので注意しながら使用しましょう。
  • ・パジャマやシーツは、通気性、吸水性、速乾性の高い素材(綿、麻、レーヨンなど)を選びましょう。
  • ・紙おむつに紙パッドを重ねると蒸れやすいためなるべく単独で使用しましょう。特に吸収体のない部分(ギャザーの部分など)が皮膚に密着すると皮膚障害が生じやすくなります。何枚も重ねたり、よじれたりしないように注意しましょう(写真)。
  • ・石鹸または清拭剤を用いた清潔ケアは1日1回までとします。頻回に行うと皮膚の表面を保護している皮脂を取り除きすぎて皮膚が乾燥しやすくなります。皮膚が乾燥している高齢者は、汗が溜まりやすい部位は毎日行いますが他の部位は2日に1回でもよいでしょう。

 汗をかきやすい季節になりました。汗による皮膚障害の多くは痒みなどの不快を伴うため、積極的に予防したいものです。

皮膚障害写真
▲写真:紙おむつ着用により浸軟した皮膚にギャザー部分が擦れて生じた皮膚障害
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