原田 和俊 先生

ボディの乾燥肌対策とは?
乾燥しやすい人の特徴と予防・ケア方法

東京医科大学病院 皮膚科
主任教授
原田 和俊 先生

お肌の乾燥を防ぐには・・・

お肌の水分は空気中の湿気や汗からもたらされます。秋から冬にかけて日本の太平洋側では湿度が低下し、お肌も乾燥してきます。乾燥した肌は皮膚のかゆみを引き起こし、皮膚炎などのトラブルの原因となります。お肌の乾燥はどうやって防げば良いのでしょうか。

乾燥肌の原因

お肌の乾燥には、皮膚を取り巻く環境が原因となる場合(外的要因)と、皮膚そのものが原因となる場合(内的要因)があります。

●乾燥肌の外的要因

皮膚の乾燥の外的要因としては、湿度の低下、居住環境、誤ったスキンケアが挙げられます。皮膚の乾燥は湿度が低下する秋から冬にかけて悪化します。日本では住宅の状況がよくなり、室内の気密性が高くなっています。さらにエアコンによる除湿によって室内の湿度は低下し、お肌は乾燥します。
入浴時、強くお肌を擦ることも皮膚の乾燥の原因となります。皮膚の表面を覆っている角質層は体内の水分蒸発を防いでいます。さらに皮膚の表面は皮脂腺から作られる皮脂という膜に包まれています。しかし、お肌に石鹸をつけて強く擦ると角質層や皮脂は剥がれてしまいます。

●乾燥肌の内的要因

乾燥肌の内的要因としては、お肌の水分を保持するのに重要な皮脂、角質細胞間脂質、天然保湿因子の低下が挙げられます(図1)。
皮脂はすでに述べたように、毛穴に付着している皮脂腺から作られ、皮膚の表面を覆い保湿作用を発揮します。角質細胞間脂質はセラミド、コレステロールなどから構成され、皮膚の細胞が分泌します。天然保湿因子は皮膚の細胞が作るフィラグリンというタンパク質が分解されることで作られます。角質細胞間脂質と天然保湿因子は角質層の細胞の間を埋め、丈夫な角質層を作ります。
これらの因子が少なくなると、乾燥肌になります。

角質層に重要な皮脂、天然保湿因子、セラミド
図1 角質層に重要な皮脂、天然保湿因子、セラミド

お肌が乾燥しやすい人

小児では皮脂を作る能力が未熟なため、お肌が乾燥しやすくなります。一方、加齢により、皮脂や天然保湿因子の合成能力は低下します。このため、高齢者も皮膚が乾燥します。
アトピー性皮膚炎の患者さんでは、細胞間脂質であるセラミド量の低下があることがわかっています。魚鱗癬という病気は、天然保湿因子の供給源であるフィラグリンというタンパク質を作る能力が低下しています。
糖尿病の患者さんは皮脂の産生低下、発汗の低下があり、皮膚は乾燥します。透析患者さんも発汗が少なく、皮脂の低下があり、さらに透析による除水で角質層へ供給される水分が低下し、お肌が乾燥しています。
最近開発された、がん細胞のみを破壊する抗腫瘍薬(分子標的薬)を内服しているがん患者さんもお肌の乾燥が出現することがあります。

お肌が乾燥しやすい人

  • ・子ども、高齢者の方
  • ・アトピー性皮膚炎の方
  • ・魚鱗癬の方
  • ・透析中、糖尿病の方
  • ・抗腫瘍薬(分子標的薬)投与中の方

乾燥肌を放置するとどうなるか

乾燥したお肌では、外界からの有害な化学物質や微生物から体を防御することができなくなります。その結果、皮膚に侵入した物質に対し、アレルギー反応が引き起こされ、皮膚の炎症やかゆみを生じます。さらに、乾燥した皮膚にはかゆみを伝える神経が入り込み、弱い刺激でも強いかゆみが発生します。皮膚の乾燥によって発生した炎症を皮脂欠乏性皮膚炎といいます(図2)。

皮膚の乾燥によって生じた皮膚炎
図2 皮膚の乾燥によって生じた皮膚炎

乾燥肌の予防・ケア方法

乾燥肌を防いだり、ケアしたりするには、お肌の乾燥を引き起こす外的要因と内的要因を取り除けば良いことになります。室内の湿度の低下を防ぐには、エアコンによる過度の除湿を行わないようにし、加湿器を使用しましょう。
入浴時にお肌をやさしく洗浄することも重要です。ドライスキン用の石鹸が販売されていますので、入浴時に使用することは乾燥肌予防に有用です。これらの製品は洗浄力がマイルドなので、入浴後もお肌の乾燥を防げます。体の汚れを落とすときは泡でやさしく洗浄することが大切です。ナイロンタオルなどでお肌を擦るのは厳禁です。
また、お肌は温まるとかゆみが生じます。長湯で過度にお肌を温めることや、血行が良くなる辛い物の摂取や飲酒は控えましょう。

次に内的要因であるお肌の乾燥には、スキンケア製品を使って保湿することが大切です。皮膚科を受診し乾燥肌と診断されれば、ワセリン、尿素やヘパリン類似物質が含まれた軟膏やクリームが処方されます。これらの保湿剤を1日2回程度外用することで、乾燥したお肌がうるおいます。

しかし、これ以外の保湿剤も数多く販売されており、薬局やドラッグストアーで購入することができます。これらの製品は医師が処方する保湿剤と比べ、保湿剤としての能力が劣るということはなく、種類が多いため、香りや塗り心地など、自分に合ったものを選ぶことができます。また、保湿成分が入った入浴剤も発売されており、入浴時のスキンケアとして有用です。

ワセリンは角質層の表面に膜を作って保湿するエモリエントという保湿剤ですが、水分を保持する機能をもつモイスチャライザーは保湿剤としてさらに有用です。特に、角質層の機能維持に重要なセラミドを含む製品も販売されていますので、購入して使用するのも良いと思います。
保湿剤やスキンケア製品を上手に使って、乾燥がない健康なお肌を保ちましょう。

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