門野 岳史先生

どうしてしみはできるのでしょうか?

聖マリアンナ医科大学 皮膚科学教室

准教授
門野 岳史 先生

 しみは嫌ですよね。私も年を重ねるにつれて段々増えてきました。年をとるとしみができやすくなるのは仕方ないといえば仕方ないですが、それでは具体的にしみとは一体何なのでしょうか?そしてしみはどうしてできるのでしょうか?

 私たちの肌や毛髪の色はメラニン色素の量や種類で決まってきます。人にみられるメラニンにはユーメラニンとフェオメラニンの2種類があります。ユーメラニンは黒色で、フェオメラニンは黄色です。日本人の髪の毛は主にユーメラニンですので黒く、逆にフェオメラニンが主体になると金髪になります。そして加齢に伴って露光部を中心に局所的にメラニンが過剰になり、皮膚が黒くなったものが“しみ”であり、老人性色素斑などと呼ばれます。

 もともとメラニンは皮膚を紫外線から守るために存在します。メラニンはメラノサイトという細胞によって作られますが、紫外線を浴びるとこのメラノサイトが活性化してメラニンが多く作られるようになります。メラノサイトから生産されたメラニンは皮膚の細胞に取り込まれ、皮膚を黒くします。これが“日焼け”です。皮膚は1-2ヶ月で入れ替わっていきますので、一度黒くなった皮膚も夏が過ぎると次第に元に戻るのですが、何度も日焼けをし、長期間紫外線にさらされると、次第に紫外線による皮膚へのダメージが蓄積していきます。

 紫外線は皮膚の大敵です。紫外線によって段々と皮膚の細胞は壊れやすくなり、形がいびつになって過剰に増殖し“いぼ”のようになったりします。このいわゆる“いぼ”のことを脂漏性角化症と呼びます。また、皮膚の繊維が次第に壊される結果、皮膚のしなやかさが失われ、しわが目立つようになります。

 しみがどうしてできるかについては実はまだ余りはっきりしたことは分かっていません。ただ、紫外線による皮膚の障害や老化と深く関係しているのは間違いないようで、こうした変化に伴って、メラノサイトが異常に活性化したり、メラニンが過剰に皮膚に取り込まれたりすることによってしみができると考えられています。

 それでは、しみを防ぐにはどうしたらよいでしょうか。しみは日焼けの回数や、子供の頃からの日光曝露の蓄積により決まってきます。つまり、遺伝よりも環境が重要で、長い年月を経て、日光による皮膚のダメージが蓄積されていく中で生じてきます。子供の頃の日焼けは今更取り戻すことはできませんが、今からでも適切なサンスクリーンを塗ることでこれ以上の皮膚へのダメージを最小限に抑え、しみが増えるのを防ぐようにしたほうがよいでしょう。また、しみの数とほくろのガンである悪性黒色腫は関連があることが知られていますので、皮膚のガンを予防する意味でもきっちりとした紫外線対策をするのがお薦めです。

シミ写真
▲写真:“しみ”(老人性色素斑)と“いぼ”(脂漏性角化症)が顔面に多くみられる。
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