ふと寝ているときにからだがかゆくなったり、肌が敏感になって刺激を感じたりすることはありませんか?実はそのかゆみは、乾燥やこすれ、紫外線などの肌ストレスによって、肌のバリア機能が低下しているサインかもしれません。
今回は、「からだのかゆみの原因」や「からだのかゆみの予防方法」、「適切な対処法」について解説します。
「からだがかゆい」と感じるのは、「肌のバリア機能の低下」が原因のひとつとしてあげられます。肌のバリア機能とは、外部の刺激からからだを守り、皮膚を正常に保つ仕組みのことで、主に以下の2つの重要な役割があります。
しかし、この肌のバリア機能を担うのは、0.2㎜という厚さしかない「表皮(ひょうひ)」という組織です。
表皮は層構造になっており、一番外側にタイルのような細胞が重なり合う「角質層」があります。角質層はうるおい成分「天然保湿因子(アミノ酸や尿素など)や角質細胞間脂質(セラミドや脂肪酸など)」で満たされ、角質層の表面は天然の保湿クリーム「皮脂膜」でヴェールのようにコーティングされています。
健康な肌では、このバリアが十分に機能することで、外部からの刺激をブロックし、みずみずしさを保っています。
ところが“乾燥や摩擦、紫外線、洗浄剤”などによる肌へのダメージによって、表皮のめくれやひび割れが生じると、角質に隙間が生じて肌から水分が抜けだし、バリア機能が低下します。
このバリア機能が低下すると、肌は無防備な状態になり、刺激に対して敏感になります。これは、外部からの刺激を感知し、痛みやかゆみなどの感覚を脳に伝える神経線維が肌の表面近くまで伸びてきて、敏感になるためで、少しの刺激に対してもかゆみを感じやすくなります。
かゆみを感じると、私たちは無意識にかゆいところをかきたくなります。
しかし、かゆみにまかせて患部をかくと、かくことによって肌表面が傷つき、“角質層のはがれ”や“ひび割れ”が起こることで、さらに乾燥が進み、ますます刺激に敏感になることでかゆみを感じやすくなります。
また、かくこと自体が刺激になって、肌の内部から「ヒスタミン」というかゆみ物質が大量に放出され、さらにかゆみが強くなります。
「かけばかくほど余計にかゆくなる」という経験は誰しもあるように、かくことで症状が悪化するという悪循環に陥るのです。
肌のバリア機能が低下してしまう理由はさまざまです。生活のなかでよくある原因をみてみましょう。
日常的にありがちなものが、紫外線や乾燥による肌へのダメージです。紫外線は、私たちの健康に欠かせないものである一方、一度に大量に浴びると皮膚の細胞を傷つけ、肌に大きなダメージを与えます。
日焼けしたあと、肌がかさつくのは、ダメージによって肌のバリア機能が低下するからです。冬の気候や暖房などのエアコンによる空気の乾燥もまた、表皮の水分を奪い、バリア機能を低下させる原因になります。
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洗浄力の強いボディーソープの使用による皮脂の落としすぎや、こすりすぎなどによる間違ったスキンケアもまた、肌のバリア機能を低下させます。また熱いお湯につかる、長時間湯船につかるなどの入浴習慣も、肌にダメージを与えます。また、入浴後に保湿ケアをしないことによって肌が乾燥し、バリア機能の低下を招くことがあります。
歳を重ねると、若いころに比べて皮脂の分泌量が低下し、皮脂膜によるコーティング力が弱まります。皮膚内部の水分量や天然保湿成分も少なくなるため、どうしても乾燥しやすく、肌のバリア機能も低下します。
常時マスクを着用することによる摩擦や、ベルトやブラジャー、襟、袖まわりなど衣服によるこすれ・圧迫によって角質層がはがれたり、傷がついたりすることによっても肌のバリア機能が低下することがあります。
花粉やダニ、金属などの特定の物質に対するアレルギーを持つ方の場合は、それらに対するアレルギー反応として皮膚に炎症が起き、バリア機能が低下することがあります。
女性の場合、加齢や性周期にともなうホルモンバランスの変化と肌のバリア機能とは密接な関わりがあります。もともと、女性ホルモンの一種である「エストロゲン」には、みずみずしい肌をキープする働きがあるのですが、月経前や月経中、閉経後など、エストロゲンが減少する時期は肌荒れや乾燥が起きやすく、肌のバリア機能も低下します。
アトピーを持つ方は、その症状の一端として肌が極度に乾燥しやすい特徴があり、バリア機能も低下しています。強いかゆみのためにアトピーの部分をかいてしまい、それによって角質層がはがれ、バリア機能が破壊されてしまうこともあります。
肌は十分な栄養と睡眠を取ることでダメージを修復し、バリア機能を維持しています。ところが暴飲暴食や睡眠不足などの生活習慣の乱れによって、修復のペースが乱れ、バリア機能を正常に保つことができなくなります。
乾燥によるかゆみは、全身のどこにでも発生しますが、口周りや頬、腕や脛、背中、手指などのもともと皮脂分泌が少ないところは特に乾燥によるかゆみが発生しやすい部位です。また、衣服でこすれた部分や、圧迫されやすい胴・胸まわりや、首まわり、手首まわりなどもかゆみが起きやすい場所です。
かゆみを予防するためには、肌へのダメージを防ぐとともに、正しい生活習慣やスキンケア習慣によってバリア機能をベストな状態に保つことが大切です。日常生活に取り入れるべき方法をみていきましょう。
バリア機能を維持し、かゆみを防ぐためには、肌の乾燥を防ぐことがとても大切です。生活環境と日々のスキンケアの両面から見直しましょう。
乾燥しやすい冬場やエアコンを使用するときは、加湿器を活用して湿度を適切に保つようにしましょう。また、普段の生活では、こまめに保湿クリームを塗って肌をしっかり保湿し、乾燥や刺激から肌を守りましょう。もともと敏感肌の方や乾燥によって肌が敏感になりやすい方は、刺激の少ない敏感肌対応の保湿剤を選ぶとよいでしょう。
紫外線は夏場だけではなく、一年中降り注いでいます。外出をするときは、日焼け止めを活用して紫外線のダメージを防ぎましょう。日焼け止めを塗る際は、あらかじめしっかりと肌を保湿してから日焼け止めを手に取り、優しく押さえるようにしてムラなく塗るようにします。肌が敏感な方は、紫外線吸収剤フリーで肌に負担の少ない日焼け止めを選ぶとよいでしょう。特に日差しの強い夏場は、日焼け止めだけでなく帽子や日傘なども組み合わせて日光を遮りましょう。
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よかれと思っておこなっている入浴・スキンケア習慣が、肌にとっては大きなストレスになっていることがあります。特に「洗いすぎ」や「こすりすぎ」には要注意です。例えば「熱い湯につかる、長風呂、ゴシゴシと強く擦り洗いをする、洗浄力の強いボディーソープで洗う、スクラブやピーリング剤を頻繁に使用する」などの習慣は、肌を傷つけ、バリア機能を低下させます。入浴をする際は、肌に負担をかけないぬるめのお湯につかるようにし、からだを洗うときも、泡でやさしく洗うことを心がけましょう。また、入浴後の肌は一見うるおっているように見えますが、角質層がふやけて水分が抜けだしやすく、非常にデリケートです。タオルドライで水分を取り除いたら、すぐに保湿ケアをして肌を保護することも大切です。保湿する際はうるおい成分が配合された低刺激性の薬用保湿剤を選んで使うのもよいでしょう。
日中にダメージを受けた肌は、私たちが夜寝ている間に修復されます。この修復のプロセスは、脳の下垂体から分泌される成長ホルモンが、ターンオーバーを促すことで起こります。この成長ホルモンは、私たちが眠りについてから深い睡眠へと入る初めの3時間に最も多く分泌されることがわかっています。また、入眠前に、部屋を暗くしたり、テレビやスマートフォンなどの強い光を見ないようにすることで、メラトニンという自然な眠りを促すホルモンの分泌が高まり、入眠をスムーズにしてくれます。リラックスして質の高い睡眠がとれるよう、光や音に邪魔されない睡眠環境を整えましょう。
肌のためには食事面の見直しも必要です。肌の細胞の修復に必要な栄養素を日々の食事のなかに積極的に摂り入れましょう。まず、新しい細胞を作る材料になるタンパク質は牛肉、豚肉、鶏肉や魚などのおかず類や、大豆を使った豆腐料理や豆乳などからしっかり摂取しましょう。そして肌の新陳代謝や細胞の合成に必要となる、ビタミンやミネラル類などは、それぞれ野菜を使った副菜や果物、魚介類などから摂取するようにしましょう。
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普段身に着けている衣類の素材や形状、縫い目などが肌に負担になっていないかチェックしてみましょう。かゆみに敏感な方は、肌にやさしい綿といった天然素材の衣服や、首回り、ウエスト周りなどのこすれや締め付けの少ないものを選ぶとよいでしょう。洗濯表示やブランドタグが刺激になることもあります。タグを取り除いたり、肌に直接触れないようにしたりして工夫しましょう。
かいた汗をそのままにしていると、汗に含まれるナトリウムなどのミネラル成分や乳酸などにより、通常は弱酸性に保たれている皮膚表面がアルカリ性に傾き、肌にとって刺激となって、かぶれや湿疹を引き起こす原因になることがあります。激しい運動や通勤通学などで汗をかいたときやマスク内がムレてしまったときは、清潔なタオルで汗をやさしく拭き取りましょう。濡れタオルやウェットティッシュを使ってふき取る際もなるべく肌をこすらないように注意しましょう。
「からだがムズムズしてかゆい!」と感じたときは、どうすればよいのでしょうか?
かゆみを感じたときの正しい対処法について詳しくみていきましょう。
かゆみを自覚すると、ついつい反射的にかきむしりたくなります。しかし、かくのは絶対にNGです。かゆいところをかいてしまうと、角質層を傷つけてバリア機能を破壊してしまったり、あるいはかきむしったことが新たな刺激になって、ますますかゆみが増したりという悪循環に陥ります。
かゆみを感じたら、まずは患部を冷やすのが基本です。冷たい濡れタオルを患部に当てて、冷やしましょう。かゆいところを冷やすことで、かゆみを脳に伝達する神経(知覚神経)が鎮静化し、かゆみを感じにくくすることができます。ただし、冷やし過ぎると凍傷といった肌トラブルが起きる場合があるので、保冷剤や氷を使う場合はビニール袋に入れてタオルで包んでから患部に当てるようにして、冷やし過ぎないように注意してください。
かゆいところを冷やしても、かゆみが治まらないときや、かゆみがどんどん強くなったり、症状の範囲が広がっているなどの場合は皮膚科専門医に相談しましょう。かくことを我慢できないほどのかゆみが続いているときも、無理をせずに皮膚科医に相談しましょう。
肌を乾燥から守り、肌のバリア機能を正常に保つためには、日頃の正しい入浴と保湿ケアがとても大切です。“お風呂の温度は低めにする”、“ゴシゴシとこすらない”、“洗浄力が強いものは避ける”といった肌に負担をかけない入浴で肌を清潔に保ち、入浴後はしっかりとうるおい成分の入った薬用の保湿剤を塗って肌を守りましょう。乾燥からのかゆみが起きやすい方や、もともと乾燥肌の方は、肌が刺激に対して敏感になっているため、自分の肌タイプに合ったスキンケア製品を使用することが大切です。化粧水や乳液、ボディーソープ、入浴剤、日焼け止めなど、直接肌に触れるものは、肌にやさしい低刺激性の商品を選ぶようにしましょう。
からだのかゆみは、肌のバリア機能が低下し、肌の乾燥が進んでいるサインです。まずは生活習慣を見直し、乾燥、紫外線、こすれ、間違ったスキンケア習慣などの原因を取り除き、肌のバリア機能を回復させましょう。特に、毎日の入浴と保湿ケアの習慣はとても大切です。正しい入浴方法と自分の肌タイプに合ったスキンケア製品によるこまめな保湿ケアを取り入れ、みずみずしくすこやかな肌を維持しましょう。
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