小林  智美先生

関節拘縮のある患者のスキンケア

日本大学病院
皮膚・排泄ケア認定看護師
小林 智美 様
 脳梗塞や脳出血の後遺症では、麻痺が問題となることがしばしばあります。麻痺は、筋、関節、神経系などの異常により、基本的な身体運動がほとんどあるいは全く不能になった状態で、錐体路や末梢神経の障害による随意運動の障害を指します。自力による関節運動ができないため、麻痺のある患者さんの中には写真①のように指がまがった状態で固まってしまい、関節拘縮を生じる方がいます。このような場合は、握った手の中で爪が伸び、自分の爪で手のひらを傷つけてしまうこともあります。

関節拘縮
▲写真①
 また、指どうしが接触していると汗やよごれなどにより皮膚が浸軟し、いつのまにか指の間にびらんや潰瘍などの皮膚障害を起こし、浸出液が出てくるといったようなこともあります。関節拘縮部位や皮膚接触部位は清潔が保たれにくく、臭いがしてきたり、時には指の間や手のひらに白癬を伴うこともあります。さらに爪切りやスキンケアを行う際、手を開こうとすると痛みが伴い、ケアがなかなか困難な場合もあります。しかし、清潔に保たないとびらんや潰瘍が悪化し感染症へ移行する可能性も考えられます。

 そこで、スキンケアの基本となる洗浄は写真②のようにたっぷりの泡を皮膚にのせて、数分間そのままにし、洗浄成分を指の間にしみこませ、優しく洗います。また、患者さんや家族の許可を得て、ゴム製のスティック状のブラシを用いて洗うことがあります。やわらかいラバーは皮膚を傷つけにくいため、過度に浸軟していない皮膚には使うことができます。洗い終わったら、ガーゼを無理に突っ込まず、コットンガーゼなどを用いて、洗浄時に使用したブラシにガーゼを巻き付けたりして、指の間を拭くとよいでしょう。

基本となる洗浄
▲写真②
 皮膚が浸軟している場合は、とても傷つきやすいため、洗浄時の摩擦で皮膚が欠損することがあります。その場合は摩擦を加えず、指でマッサージしながら、またはシャワーの水圧で十分に流すようにします。一度に汚れを落とすのではなく、こまめにケアをすると良いでしょう。
 湿って閉鎖された状態が続く、写真③のような抑制中なども、関節拘縮のある患者さんと同様の状態が起こりやすいため、清潔を保つようにしましょう。
 洗浄後は、皮膚と皮膚の接していない部分には、保湿剤を塗布し、皮膚を健やかに保つようにしましょう。
抑制中
▲写真③
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