介護care

坪井  良治先生

ご家庭でできるスキンケア(大人編)

監修:東京医科大学 皮膚科
教授
坪井 良治 先生
公益財団法人 日本訪問看護財団

加齢による皮ふトラブルの原因や清潔ケアの方法、入浴できない時のらくらく清潔法、乾燥肌の予防ケアなどご家庭でできる大人のためのスキンケア方法についてお話していただきました。

1.加齢による皮ふトラブルはなぜ起こる?

加齢にともなう乾燥で、皮ふの「バリア機能」が低下

高齢者は、加齢によって皮脂の分泌が減り、水分を保つ力も低下するため、乾燥肌になりがちです。乾燥してきめが粗くなった皮ふは、細菌・真菌、ほこりなどから体を守る「バリア機能」が失われた状態。外部からの刺激によって、湿疹・かゆみなどが起こりやすくなっています。

体力低下や疾病も要因に

皮ふのバリア機能の低下だけでなく、体力や抵抗力の弱さ、特定の病気や薬物が皮ふトラブルを引き起こすこともあります。

加齢による皮ふトラブルはなぜ起こる

2.まずは清潔を保つことが基本です

清潔を保つことは皮ふトラブルの予防に有効です

清潔の基本といえば入浴。寝ていることが多くても、皮ふは汗や新陳代謝で汚れています。体調や季節にもよりますが、週に2回は入浴を心がけましょう。入浴は、皮ふトラブルの予防・進行抑制のためにも大切です。

入浴の効果

  • ● 全身の血行がよくなる
  • ● 皮ふを清潔にし、また、除圧することで床ずれを予防する
  • ● 体がほぐれる(関節が動きやすくなる)
  • ● 介護する人が、全身を観察できる

安心な入浴のためのポイント

  • ● 体調が悪くないか確認する
  • ● 食事の前後1時間は避ける
  • ● 排泄を済ませておく
  • ● なるべく短時間で済ます
  • ● お湯の温度は40度くらい
     ・ 高血圧や心臓疾患のある人は38度くらいに。
  • ● 入浴後は水分補給を忘れずに

褥瘡(床ずれ)の患部の洗い方

患部とそのまわりをやさしく洗う

患部のまわりにドーナツ状に垢がたまって過角化(皮ふが硬くなる)すると、真菌に感染しやすい状態に!

褥瘡の患部の洗い方

在宅介護で入浴ケアが難しい時は、部分浴や体を拭く清拭をするとよいでしょう。

手浴・足浴の方法

指の間は汚れがたまりやすいので、しっかり洗いましょう。

お湯で濡らしたタオルを使う

手浴・足浴の効果

  • ● 手足の清潔を保つ
  • ● 全身の血行がよくなる
  • ● 爪がやわらかく、切りやすくなる

3.入浴できない場合の清潔保持のために

清拭の効果

体を拭く清拭には、皮ふの汚れを落とし、清潔を保つことができるのはもちろん、他にもたくさんの効果があります。

  • ● 拭くことにマッサージ効果があり、血行が促進される
  • ● 手足を動かしたり、体位を変えることで、褥瘡(床ずれ)や拘縮(関節が硬くなった状態)を防ぐ
  • ● 全身を観察することで、皮ふトラブルなどを早期に見つけられる
  • ● 拭く人と拭いてもらう人のコミュニケーションが深まる

拭く人も拭いてもらう人も、気持ちよく行うポイント

  • ● 体調のよい日に行う
  • ● 室内の温度(寒さ)に気をつける
     ・暖かく感じる日でも窓を閉めておく。
     ・寒くないように、体にバスタオルをかけて、清拭する部分だけを露出する。
  • ● 食事の前後は避ける
     ・排泄も済ませておくとよい。
  • ● 無理をしないこと
    ● 部位ごとに数日に分けて行ってもよい

ポイント

清拭の方法

清拭には、いくつかの方法があります。それぞれの特徴を知り、介護する人・される人双方にとって、なるべく負担のかからない方法を選ぶことが理想的です。

温かいおしぼりで拭く

温かいおしぼりを作るときは、火傷の予防にゴム手袋をすること。ぬるま湯でしぼったタオルをビニール袋に入れて、電子レンジで温めるのも方法です。

電子レンジ

石鹸を使う

石鹸はよく泡立ててから使うこと。最近は、便利な泡タイプの石鹸もあります。皮ふに洗浄成分が残らないように、よく拭き取ることが大切です。その際は、ゴシゴシこすらないよう注意しましょう。

清拭剤を使う

体の汚れを拭き取る清拭剤には下記のようなものがあります。用途によって選ぶとよいでしょう。

おもな清拭剤の種類

全身用清拭剤

お湯で液を薄め、しぼったタオルで拭く「液体清拭剤」や、泡を体に伸ばしてから拭き取る「泡状清拭剤」などがある。石鹸に比べ短期間で清拭できるため、介護する人の負担が少ない。とくに「泡状清拭剤」はお湯を使わないので、衣類やシーツを濡らしてしまう心配もない。

ドライシャンプー(頭髪用の清拭剤)

お湯のいらない泡状のシャンプー。泡をつけたブラシでブラッシングするなど、本人にも簡単にできる。

部分用清拭剤

皮ふへの刺激をおさえたアルコール(消毒薬)成分未使用のものや防臭効果のあるものなど。洗顔やおむつ交換時は、アルコール未使用のものがおすすめ。

洗浄剤

4.清拭剤を使ったらくらく清拭法

液体清拭剤の場合

用意するもの:液体洗拭剤、バケツ、バスタオル、タオル、ゴム手袋、ビニールふろしき

1.キレイなバケツに60度のお湯を入れ、液体洗拭剤を溶かし、タオルを何枚かしぼる。
※お湯が熱いので、ゴム手袋などをつけましょう。
タオルを広げ、湯気を払って熱過ぎないことを本人に確認して、胸、お腹、腕の上にのせる。

2.上からビニールふろしきをかぶせ、保温のためバスタオルなどをかけて、5~10分待つ。
※この間、頭部清拭や洗顔をします。

液体清拭剤の仕方1

3.バスタオルとビニールふろしきをめくり、体にのせてあったタオルで汚れを丁寧に拭き取る。
※皮ふがふやけて汚れが取れやすい状態なので、ゴシゴシこすらないようにしましょう。
その後、乾いたタオルでから拭きする。

4.横に向かせ、背中を同じ手順で清拭する。

5.同じ手順で、足を清拭する。
※体が冷えないよう、清拭の済んだ上半身にはバスタオルをかけてあげましょう。

6.最後におむつまわりを清拭する。

液体清拭剤の仕方2

泡状清拭剤の場合

用意するもの:泡状洗浄剤、バスタオル、タオル、蒸しタオル

1.清拭剤の泡を手に取り、指先から手首に向かって伸ばし、指の間にもまんべんなくつけてマッサージする。次に、手首から肩までマッサージしながら伸ばし、タオルで拭き取る。

泡状清拭剤の仕方1

2.清拭剤の泡をタオルに適量のせ、胸腹部にまんべんなく伸ばす。腹部のマッサージは「の」の字を書くように行う。バスタオルを胸腹部にのせるようにして体を包み、水分を拭き取る。

泡状清拭剤の仕方2

3.足も手と同じように、指の間にまんべんなく泡をつけてマッサージして拭き取る。足首からももの方へとマッサージしながら泡を伸ばしていき、拭き取る。
※ひじやひざ、かかとの角質は、蒸しタオルで拭くときれいに取れます。

泡状清拭剤の仕方3

4.体を横に向かせて、背中に泡を伸ばし、拭き取る。
※蒸しタオルを使った場合は、褥瘡(じょくそう)予防のため、皮ふに水分を残さないよう最後に乾いたタオルで拭きましょう。

泡状清拭剤の仕方4

5.乾燥肌の予防ケア

肌にやさしい入浴のポイント

ただでさえ加齢によって皮ふが乾燥しがちな高齢者ですが、間違った入浴法によって、さらに乾燥を悪化させていることが少なくありません。正しい入浴のポイントを覚えておきましょう。

やさしく洗って、よくすすぐ

  • ・ゴシゴシこすると皮脂が落ちてしまうので、やさしく洗う。
  • ・綿のタオルなど、アレルギーを起こしにくい素材のものを選ぶ。
     手でなでるように洗うだけでも十分。
  • ・洗浄剤が残っていると、かゆみや炎症を起こすことも。よくすすいでしっかり流す。

乾燥肌用の洗浄剤もあります。

皮脂を落とし過ぎないように洗浄力がコントロールされているので、おすすめです。

ぬるめのお湯に10分くらいつかる

熱過ぎ、長過ぎは、皮脂の落とし過ぎやかゆみの原因に!

保湿入浴剤で乾燥予防。

手軽に全身の保湿ができるので、入浴後の乾燥予防や手が届きにくい背中などの保湿にたいへん便利です。

入浴

保湿剤使用のポイント

皮脂の分泌や水分保持力が低下した高齢者の肌には、保湿剤で乾燥する前にケアすることも効果的。皮ふが薄く敏感になっていることも多いので、低刺激性かどうかなど、きちんと確認して選びましょう。

入浴後はベストタイミング。あとは必要に応じて…

保湿剤は、こまめに、しっかり塗ることが大切です。とくに入浴後は、角層がやわらかくなり、肌の水分浸透・吸収力が高まっているので、保湿に最適なタイミングです。

皮ふのバリア機能を補う成分を

皮ふには、そもそも3つの働きからなる「バリア機能」が備わっています。保湿のポイントは、その働きを補うように心がけること。それぞれの働きと、働きを補う成分を知っておきましょう。

  1. 水分蒸発の抑制

    スクワランなどの皮脂類似成分(油脂成分)は皮脂膜を強化し、水分の蒸発を防ぐ。

  2. 水分を保つ

    細胞間脂質のひとつセラミドは、水分保持機能を高め、うるおいを保つ。

  3. 水分の補給

    アミノ酸系成分などの天然保湿因子は、角層に水分を補給する。

皮ふ断面

かゆみ(老人性皮ふ瘙痒症)の原因は?

高齢者の皮ふのかゆみの原因は、乾燥以外の可能性も。
正しいスキンケアをするために、一度専門医に相談するとよいでしょう。

湿疹のあるかゆみ=皮脂欠乏症皮ふ炎や乾皮症など。
湿疹がないかゆみ=肝臓・腎臓疾患や人工透析など。
スキンケア講座

赤ちゃんの肌

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