医療関係者からのアドバイスAdvice

第6回

床(とこ)ずれはなぜできる?

前川武雄先生
自治医科大学 皮膚科学教室
准教授
前川  武雄  先生

 「床ずれ」という言葉をご存知でしょうか?「床」はふとんやベッドなど寝る場所を意味します。一方、「ずれ」には色々な用途があります。「意見のずれ」、「時間のずれ」、「印刷のずれ」など、2つの物が食い違う場合には、形あるものであれ、ないものであれ日常的によく使われる言葉だと思います。

 「人間の体と何かが「ずれ」て生じる有名な皮膚の症状が3つあります。「靴ずれ」、「股ずれ」、「床ずれ」です。「靴ずれ」は靴と足、「股ずれ」は下着やズボンと股がずれて生じます。「床ずれ」はふとんやベッドだけでなく車椅子などで生じるものも含めて「床ずれ」と呼んでいます。

 「ずれ」は「床ずれ」の重要な原因の1つではありますが、「ずれ」と共に重要な原因は圧迫です。病気や高齢など、体が自由に動かせない原因がある時に、骨と「床」との間に挟まれた皮膚や皮下組織の血管が押し潰されてしまったり、引き延ばされてしまうために、血行が途絶えてしまい傷を生じるのが「床ずれ」です。正式には「褥瘡(じょくそう)」という病名で呼ばれます。

通常、人間は長時間同じ姿勢を続けていると体に痛みや痺れを感じるため、意識的あるいは無意識に少しずつ姿勢を変えています。寝ている時も同様で、無意識に寝返りを打っているため、通常「床ずれ」はできません。しかし、体力の低下や病気により寝返りが打てない場合は、圧力がかかっている部位の血行が途絶えてしまい「床ずれ」が生じます。

 また、体は動かせるにも関わらず、神経の病気や麻酔により痛みや痺れを感じない状態でも同様に、長時間同じ姿勢でいることにより「床ずれ」が生じます。このため「床ずれ」は、寝ている時や座っている時に体重がかかりやすく、骨と皮膚との距離が近いお尻、踵、背中などに発症しやすいことが知られています。

 では「床ずれ」を防ぐにはどうすればよいでしょうか。最も重要なのは一定の部位に強い圧力や長時間の圧力がかからないよう体の姿勢を整えていくことです。数時間ごとに体の向きを変えることや、体重を分散させるようにクッションなどを使用することが「床ずれ」の予防につながります。また、乾燥した皮膚、湿った皮膚、汚い皮膚などは、皮膚の耐久性が弱くなり、通常よりも弱い力で「床ずれ」が生じ得ます。このため皮膚を健康な状態に保つための、日々のスキンケアもとても重要な予防策と言えます。

 「床ずれ」は予防と早期発見がとても大切です。圧力やずれを防ぎ、日々のスキンケアを行うことである程度の予防が可能です。毎日の予防と観察を行い、万が一「床ずれ」ができてしまった時は、早めに医療機関を受診しましょう。

スキンケア講座
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